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小田原・箱根・湯河原・真鶴 社会

公開日:2015.03.14

「普通」という幸せ
南相馬市小高区・久米静香さん(62)

 「わたしの震災は3月12日なの」。福島第一原発から15キロ圏内の南相馬市小高区に居を構える久米さんは原発の水素爆発後、秋田や山形を転々とし、相馬市の借り上げ住宅に落ち着いた。

 小高区は2016年4月を目途に帰還目標を立てている。日中だけ出入りが許可された街に、久米さんは集いの場を作った。時折、依頼を受けて小高を案内する。「説明するより見てもらう方が伝わると思う」。その言葉通り、津波にのまれた後、原発に汚染された街を走る間、久米さんは多くを語らない。かつて小高で盛んだった養蚕業を復活させようと、昨年始めた「お蚕様プロジェクト」が励みだ。糸を手繰り、無心で折り機に向かう時間は安らぎにつながっている。「人間って便利な動物。忘れる能力を持っている。最初は『東電憎し』だったけど、悔しさや悲しさは薄れるものなのね」。

 久米さんが語るのは”普通の生活の大切さ”。「普通って買えない。日本の中に人が戻れない場所がある、あの日から進んでも始まってもいない場所がある、って知ってほしい」。来春からの故郷での生活を心待ちにしている。

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