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小田原・箱根・湯河原・真鶴 文化

公開日:2015.12.05

体験レポート【3】
本から生まれる出会い

  • 隣のブースの話にも、耳を傾けてしまう。いつしか話の輪が広がっていた

 市内のイベントに記者が直接参加し、その魅力を伝える体験レポート。今回は、11月21日に開催された「第3回小田原ブックマーケット」に出店した。

 公民館やまちなかのカフェが”一日古本屋さん”に変身するブックマーケット。出店のきっかけは、運営委員長の牛山惠子さんへの取材で「好きな本」談義に花が咲いたこと。さらに3回目の今回は、初めて「一箱古本市」として一般公募者が出店できると聞き、「自分が好きな本を並べてみたら、興味を持ってくれる人がいるだろうか」―。そんな湧き上がる好奇心に従い、出店を決めた。

 「一度は気に入って買った本を、気持ちごと受け継いでくれる人との出会いの場になれば」。牛山さんの言葉がよみがえる。青春時代からこれまで、自分を形成してきた本に絞り、選別に入る。だが、いざ売る本を決める段階になると、手が止まる。古くは中学生の時に買った学園小説。長じてからも度々読み返してきた。過去2回の出店経験を持つ人が話していた。「同じ年代の人が懐かしがって手に取ってくれるのもうれしいが、本来の対象年齢の子どもが買ってくれたらうれしい」。もうこの本は、新たな持ち主のもとへ旅立つ時かもしれない。80冊を選んだ。

※※

 晴れ渡った冬空の土曜日、いざ開店。最初に本を手に取ったのは会場付近に住む女性。以前から贔屓だという料理研究家のエッセイを2冊買ってくれた。山登りが趣味という夫婦には山岳マンガが、「美しいものが好き」という若い女性には大正ロマンの着物図鑑が、もっとも思い入れのあった学園小説は、小さな女の子の手に渡った。

 大切にしてきた本が、手元から離れてゆく。一抹の寂しさを上回ったのは、買ってくれた人の笑顔だ。一冊ずつ、感想を添えて手渡すと、どの人も「楽しみ。大切に読みます」と受け取ってくれた。牛山さんの言葉通り、たくさんの人が、思いとともに受け継いでくれると思うと清々しかった。

 次回開催は未定だが「本と人との素敵な出会いを想像すると、イベントはやめられません」。閉店後、牛山さんは笑顔で話していた。

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