熊本地震を受け、神奈川県は被災地の要請に応じ建物の倒壊危険度を判定する「応急危険度判定士」を派遣した。小田原市からは、建築指導課の倉橋慶光さん(37)と神谷剛さん(27)が4月23〜25日の3日間、熊本市東区花立で判定業務にあたった。
要請から3日後の出発で、「心の準備をする間もないほど急な話だった」と話す倉橋さん。現地入りした翌日から、朝6時半に宿舎を出発し、バスで2時間移動し現場へ向かう。車窓からは、片側車線を塞ぐ直径5mほどの落石も見受けられたという。
熊本市東区花立は、震度7を観測した益城町から約7Kmの場所にあり、道路の波打ちや建物の外壁の剥落など散見されるものの、土砂崩れ等の心配はない地域だった。作業の拠点となった「秋津出張所」は、2階建の1階が避難所になっており、炊き出しを行う住民の日常がすぐそばにあった。
滞在中も頻繁に感じる余震。報道で、判定済みの家屋に「危険」や「調査済み」などのステッカーが貼られる様子を見ていたことから、自宅の安全度に不安を感じている住民が多かったという。在宅確認後、判定を始める際に、「あちこちで『待っていた』と言われました」と振り返る倉橋さん。二次災害の危険性を鑑みて外観調査だったが、住民から「このまま住み続けていいのか」と不安をぶつけられる場面に多く立ち会ったという。
共に初めての判定業務で、「互いの判断を確認しあいながら慎重に」、1日7時間近くの作業にあたった。
神谷さんは、「築35年以上」「木造在来軸組工法」など、諸条件に該当する市内の木造住宅を対象に、無料の簡易耐震診断推進事業に携わる。被災現場を自身の目で見たことは「日頃の実務にも非常に大きな経験となった」と言葉をかみしめた。
また倉橋さんは、「家族とは緊急時の集合場所を決めてはあるが、改めて備蓄品の大切さを痛感した」と結んだ。