神奈川と静岡の県境、箱根外輪山で最高峰を誇る金時山(標高1212m)。地域の人たちに親しまれ、年間10万人以上の登山者が訪れるこの山に登り続けた市内新屋在住の秋山富男さん(77)が10月14日、登頂5000回を達成した。
『その日』は10月14日に来た。秋山さんは午前8時過ぎ、いつもより3時間ほど遅れて家を出発。車を45分ほど走らせ、足柄峠登山口から登頂を開始。スタート地点には共に節目を祝おうと仲間が集結していた。通常、約1時間半で登る「富士山が一番きれいに見える」コースを、この日は仲間と語らいながら2時間かけてゆっくり登った。11時頃、山頂に到着。箱根から登ってきた仲間も合流、手作りの横断幕による祝福を受けた。
毎回、登頂後に声をかける金時茶屋の女将「金時娘」こと小見山妙子さんからも「おめでとう」の言葉と、手書きの記念色紙を手渡され、5000回の実感がわいた。「達成できるとは思っていなかった。夢みたい」
金時山の初登頂は1960年の元旦。19歳の時だった。59歳で300回を達成。定年退職を機に回数を増やし、年に250回前後登った。「生活習慣病を改善したくて、健康のために始めたようなもの」。雨の日も雪の日も山へ向かい、64歳で1000回、71歳で3000回を達成。その後も週5日のペースで登り続け、ついに5000回に達した。毎朝3時半起床の日々も「嫌と思ったことはない。逆に日課になっていて登らないと調子が狂っちゃう。『金時病』なんだよ」と笑う。365日開いている山小屋と仲間との出会いがあったからこそ、続けてこられたとしみじみ。「四季折々の景色も素晴らしくて。2時間登れば雄大な自然が目の前に広がる。朝一番のご褒美だね」
今後の目標は掲げていない。「あんまり自分にプレッシャーを与えると回数がいかなくなる。マイペースに一日でも長く登れるよう健康でいたいね」。
連れ添って52年の奥様は「よく頑張ったと思います。ケガに気をつけて、これからも楽しんで登り続けて欲しい」
環境省によると金時山の2017年の登山者数は約10万5000人。ゴールデンウィークと紅葉時期に登山者が集中する傾向で一番人気は公時神社・矢倉沢峠コース(約6万5000人)だった。