病に立ち向かう精神力 脳性まひのバイオリニスト

社会

掲載号:2019年6月15日号

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自宅で練習に励む水晶さんと母の啓子さん
自宅で練習に励む水晶さんと母の啓子さん

 小田原市中村原在住のバイオリニスト・式町水晶(みずき)さん(22)。脳性まひを患いながら、懸命な努力で昨春にメジャーデビューを果たした。シングルマザーで、働きながら障害のある息子を支え続けた啓子さん(49)は、子育ての様子を一冊にまとめて出版。6月30日(日)には、啓子さんが自著を語るイベント「ブックトーク」がオービックビル(小田原市栄町)で開催される。

 ちょうど8カ月健診を受ける予定だった日の朝。激しい腹痛に襲われて突然破水した啓子さんは、お腹の中で心音が弱まっていく胎児の様子に不安を感じながら大急ぎで産院へと向かった。

 帝王切開で出産した男児の体重は1836g。呼吸器をつけて総合病院へ移されたが、家族に伝えられた医師の診断は「3日の命」。幸い危険な状況は脱したが、「脳や目に障害が残るかもしれない」と告げられた。しかし、正常に比べると少し成長が遅いものの、3カ月で首がすわり、11カ月でつかまり立ちもできるようになった。「このまま何もなければ……」

 だが、淡い期待は打ち砕かれる。歩けばすぐ転び、2歳になってもクレヨンをしっかり握れない。3歳を迎えたのを機に専門医を受診すると、宣告された病名は「脳性まひ小脳低形成」だった。



 4歳の時、リハビリとして始めたピアノは指の力が弱く断念。しかしバイオリンは適していたようで、初めからきれいな音色を響かせた。当時は「プロをめざすつもりはなかった」という啓子さん。だが、「本物の音色を」と連れ出したコンサートで葉加瀬太郎さんの演奏に目を輝かせる息子の姿が嬉しく、母子家庭で経済的に楽でない状況にありながら有名なバイオリニストに指導を仰いだ。

 水晶さんの才能はすぐに開花。メキメキと腕をあげる一方、車椅子で通う小学校ではいじめを受け、中学生になると視野が次第に狭まった。抱える疾患は20種以上。辛い毎日に心は荒んでいった。

 そんな頃に東日本大震災が発生。テレビが伝える惨状に「自分はまだ幸せ」と思い直し、16歳の時に都内でチャリティコンサートを開催、慰問演奏で被災地にも出かけた。

 持ち前の積極性は復活。手のしびれを克服しようと、18歳からは体力づくりにも励んだ。医師に「治らない」と言われる病に打ち勝とうと自らを追い込み、スポットライトを浴びてステージに長時間立ち続ける体力や精神力も身に付けた。

 「顎をバイオリンでおさえないと話が止まらない」。口を開けば冗談が飛び出す明るい性格だが、その裏では常に体の痛みや不整脈に悩まされている。「長生きは恐い」。ふいに表情がかげるが、「支えてくれた母や祖父母を養っていかないと」と笑顔を見せた。



 イベントは午後4時〜5時半。参加費1200円。定員50人。ミニコンサートもあり。(問)【電話】0465・22・5370 

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