県西部で豪雨災害が発生したことを想定した水防訓練が6月29日、小田原市全域で行われた。全市で行う初の合同訓練。広域避難所などでは地域住民による訓練が行われ、市職員、消防団、土木事務所関係者、自衛隊、消防本部などが参加。全国各地で降雨による災害が増加する今、実践的な対応力を高めることが狙いだ。
同市ではこれまで5月に水防訓練、8月に総合防災訓練、10月に一斉防災訓練を実施してきたが、より実践的な訓練にするため内容を変更。年間を通じたテーマを設けて6月下旬から7月上旬ごろに総合訓練を実施するとし、今年度は「水防」をテーマに洪水や土砂災害を想定し、実施した。
訓練は、台風が北上し、1日に530ミリを超える降雨で酒匂川流域が氾濫、土砂災害が発生したという想定。酒匂川、狩川流域地区で避難判断水位に到達し、気象庁が作成した5段階の警戒レベルのうち「避難準備・高齢者等避難開始」にあたるレベル3が発令。国府津、前羽、大窪、片浦地区で土砂災害警戒情報が発表されたというもの。
酒匂川河川敷では土のうを積む訓練に取り組み、市内25カ所の広域避難所、風水害避難場所、土砂災害避難場所などでは市職員のほか自治体、市消防団などが避難訓練などを行った。
大規模な土砂災害を想定した訓練は、小田原市久野にある塔の峰の青年の家跡地で実施。住宅に見立てた建物を土砂で埋め、自衛隊がショベルカーなどを使い土砂を除去すると、市消防本部の隊員が家屋から人(模型)を救助した。この日は実際に朝から雨が降り続き、土砂災害訓練時には視界を遮る激しさに。隊員らは水を含み重くなった土砂をシャベルで掘り起こし、足元の悪い斜面を担架を持って進んだ。
市役所では災害対策本部が設置され、模擬記者会見も開かれた。記者から「浸水が想定される避難場所には誘導するのか」などと質問があがり、加藤憲一市長は「リアルさを追求し、実際の発災に近い訓練になった」と評価。一方で訓練の参加者が一部の市民にとどまっていることなどを課題としている。