真鶴町で採掘される「本小松石」の魅力を様々な角度から発見する新しいイベントが11月から始まる。
本小松石は、今から20万年〜15万年前、箱根火山の活動と連動して噴火した溶岩が固まったもの。奈良時代から墓石として活用され、戦国時代、江戸時代には城の石垣など建築にも使用され、真鶴地域では石材業が栄えてきた。現在も年間約10万トンが生産されているが、墓石需要の減少や後継者問題などの課題もあり、新たな活用方法を見つけようと町ぐるみで取り組んでいる。
彫刻素材としての魅力
真鶴町では、1963年に海岸を舞台に国内外の彫刻家が小松石で作品を作る「世界近代彫刻シンポジウム」が開催され、その翌年の東京オリンピックの都内会場周辺でも作品が展示された。オリンピックが再び東京で開催されることをきっかけに、現代日本で活躍する11人の作家により、再び小松石で彫刻作品を制作しようと「真鶴町 石の彫刻祭」を企画。コロナ禍で延期していたが、今年10月に11作品すべてが完成し、町内各所に恒久設置された。参加した彫刻家・北川太郎さんは「神々しいほど魅力がある石」と作品紹介の中で語っている。
完成に合わせ、町内の彫刻作品をめぐる「謎解きさんぽ」が11月1日(月)から30日(火)まで開催される。スマートフォンを使い、謎を解きながら町の自然をめぐる。町担当者は「道祖神のような彫刻作品に会いにきてほしい」と話している。
町民で編んだ毛糸で包む
また、本小松石を「ヤーンボミング」するイベント「ツナグ」が11月20日(土)〜28日(日)、真鶴港で開催される。アートや音楽で町の活性化に取り組む「真鶴まちなーれ」が企画した。
ヤーンボミングはカラフルな編み物で無機質なものを包む、意外性から関心を引き出すアート。町の象徴的な産業である「石」に注目し、神奈川県石材協同組合らと協力し、町民で編んだ毛糸で本小松石や積み下ろし機を包んで漁港に展示する。映像やガイドブック制作も行い、産業の成り立ちや暮らしにもふれる。事務局の徳家統さんは「つないできた文化を考えるきっかけになれば」と話す。