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小田原・箱根・湯河原・真鶴 社会

公開日:2025.10.25

文科省事務次官に増子氏
箱根町出身 特別インタビュー

 箱根町出身で小田原高校を卒業した増子宏さん(62)が7月、文部科学省の事務方トップとなる第16代事務次官に就任した。増子さんに国として見据える展望などを聞いた(9月29日取材)。

全ての根幹は「人づくり」

 ――事務次官に就任して約2カ月が経ちました。いまの心境は。

 「事務次官は大臣を補佐し、関係部局を監督する非常に責任の重い職務だと認識しています。さまざまな懸案事項がありますが、前向きに解決することを目指しています」

 ――教育、科学技術・学術、文化、スポーツといった多岐にわたる分野を統括されています。今取り組むべき課題は。

 「特に注力しているのは、高校無償化と学校給食無償化の実現に向けた取り組みです。これらは3党合意に基づく重要な政策ですが、特に高校無償化だけでも新たに4千億円の財源が必要になるため、詳細な制度設計と財源確保が最も大きな課題となっています。

 また高校無償化に伴う公立の工業高校や農業高校といった専門高校の施設老朽化対策など、公立学校への支援も並行して進める必要があります」

 ――ICT教育の取り組みとして行われている「GIGAスクール構想」の現状を教えてください。

 「一人一台端末は達成できましたが、今後は端末更新の財源措置が必要となります。さらに、端末の利用が学習効果にどれだけつながっているか、家庭学習での問題はないかなど、効果の検証も欠かせません。デジタル教科書と紙媒体をどうハイブリッドで活用していくかも、これから詰めていく段階です」

 ――来年度からは中学校を取り巻く環境が変わります。

 「本格化する部活動の地域移行は重要な課題です。特に地方では、指導者となる人材の確保が大きな問題となります。地域の実情に応じた支援をしっかりと行う必要があります。さらに中学校の35人学級への移行も確実に実施し、子どもたちがより安心できる学習環境を整えます」

 ――箱根町で生まれ育ち相洋中学校、小田原高校に進学されました。学生時代の思い出や県西地域の印象は。

 「箱根は大涌谷や仙石原など、本当に自然が豊かなまちと実感しています。遠足などでその辺りによく行っていました。中学まで野球をやっていて、小学6年の時に優勝したのが良い思い出です。

 大学在学中に小田原市に引っ越しました。小田原は城下町として北条五代の歴史があります。そして海の幸ですね。アジなど、非常に新鮮な魚が多い。実家に帰ると大量の刺身を食べたのが良い思い出です。

 箱根山、相模湾、それから丹沢。自然豊かな環境は県西エリアの特徴だと思いますし、恵まれて育ったと感じています」

 ――幼少期から現在のキャリアを目指していたのですか。

 「パイロットになりたかったので、航空大学に行こうと思っていました。しかし高校2年の時に視力が当時の受験資格を切ってしまい、諦めることになりました。視力は本当に大事ですね」

 ――文部科学行政を通じて常に意識していることは。

 「教育、科学技術、文化、スポーツなど全ての分野の根幹は『人づくり』にあると考えています。他の省庁が『ものづくり』を中心とするのに対し、文部科学省は人をつくる場所だと私は思っています。

 将来の研究者、トップアスリート、アニメや漫画などのクリエイターといった日本の未来を担う『人』をいかに育てるか。これが私たちの使命です。やるべきことは山積していますが、各分野をしっかりサポートしていきたいです」

 ――最後に子どもたちに向けてメッセージをお願いします。

 「まず『夢』を持ってもらいたいと強く願っています。そしてその夢を実現するための努力を惜しまないでほしい。これが一番伝えたいこと。

 勉強だけでなく、他人への思いやりの心を持つことも大切です。いじめの問題が増加している今だからこそ、道徳教育などを通じて、互いを尊重し合える心を育んでほしいと思います」

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