山北町立山北診療所長兼医師を務める 浜田 俊之さん 山北町在住 61歳
地域医療を後進へつなげ
○…「第2の故郷」と呼ぶ山北町にある診療所の所長就任は、2年ぶり3度目。コロナ禍で迎えた定年で離れたが、まちの様子と患者が気がかりで、新聞で町の記事を探すなど、情報収集は欠かしていなかった。復帰を決めたのは、診療所に戻って欲しいという地域住民の声だった。その後、真っ先にカルテを見返し、通院状況や診療内容をチェック。「見ていると患者さんの顔が浮かぶんだ」
○…東京都世田谷生まれ、横浜育ち。野球下手を除けば、絵に描いたような優等生タイプでパイロットに憧れていた。そんな折に、脳梗塞で倒れる祖父を目の当たりにし、中学生ながら「医者になって自分が治す」と医師を志した。県立の医療機関や保健所などに勤務し、経験を積んだ。診療所は医療機関のない三保や清水地区の地域医療を支える拠点でもあり、4つの診療科目を一人で担っている。「難解な症状でも門前払いにはしない」という信念で患者に向き合う日々だ。
○…自宅のある横浜に家族を残し、診療所の2階で暮らしている。食事面で妻や娘、息子に心配をかけないようにセイロ蒸し料理で健康を気遣う一面も。医師になってから始めたバスケットボールは「もっと長くやりたい」と3年前にヒザを手術。「2階はドリブルが出来る位広いんだ」とおどけてみせる。
○…いわゆるへき地での勤務は、診察以外にも福祉施設や行政から多くを求められるといい、「若くてフットワークが軽い医師が適任」と考えている。それでも、まずは自身が「後進が働きたくなるように、診療所の魅力アップに精一杯取り組むことが大切」と強い使命感を持って業務にあたる。「ヒザが痛いなんて言ってられないよ」とほほ笑んだ。