この春、一人の短大生が八王子花柳界の門をたたいた。入門したのは山梨県大月市在住の坂本実里さん(19)。学校に通いながら空いた時間に八王子を訪れ、見習いとして働いている。
芸名は「小鶴」。八王子芸者衆の小太郎さんによる置屋菊よしに所属する。
北海道旭川市出身の坂本さんは祖母の影響で幼い頃から日本舞踊(西川流)に親しんでいた。上京し山梨に住むと、近くの八王子が「芸者の街」であることを知った。
就職活動を控えた3月、職種の選択に悩む中、ふと昨年8月の「八王子まつり」が頭をよぎった。その時、はじめて生で見た芸者衆の踊り(宵宮の舞)。「芸者さんになるのもいいかも」--。一番印象的だった小太郎さん(の置屋)にメールした。
踊りは祖母から習った基礎がある。演歌が得意で、NHKのど自慢で優勝した経験もある。茶道は高校時代に部活で学び、部長も務めていた。
現在は週に4、5回、小太郎さんのもとで指導を受け、三味線などのお稽古事にも精を出す。一昨年に置屋を開き、これまで何人かの見習いを見てきた小太郎さんは「小鶴ちゃんはお稽古事が好き。お歌が上手なのも優れた点」と評価する。
実は坂本さんの母親は、芸者の道に反対したそう。春休みに打ち明けると「怒られました」。坂本さんはそれでも入門し「もうやるって決めた」と事後報告。すると「また怒られました」。その後、何度か近況報告を続けた。「最近になって『いつか踊りを見に行くよ』と連絡がありました」
小太郎さんは「ひとつひとつ覚えていって、みなさんに可愛がってもらえる存在になって」と期待する。坂本さんは「大変なことはたくさんありますが、それを経験するたびに『好きな所へ来ることができた』と実感しています」と笑みを浮かべた。
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