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公開日:2016.07.09

移住彫刻家蘭二朗さん
初の海外挑戦へ
チェンソーで仏像、広がるアート交流

  • チェンソーで仁王像を彫る蘭さん=丹沢湖・世附地区のアトリエ

  • 愛知で制作した雷神像大会の後オークションで人手に渡った

  • 蘭二朗さん

 熊本県出身で東京都練馬区から2008年に山北町へ移住した彫刻家蘭二朗さん(41)が、今年8月27日から3日間にわたり英国・イングランド東部のノーフォーク州で開催されるチェンソーアート国際大会に出場することになった。移住から8年、活動の域が世界へ広がる。

 かつて鉄道の町として栄えたJR御殿場線山北駅前にある商店街―。その一角にある黄色い建物で仏像彫刻の教室を開く。30人いる生徒の大半は年配者で、中には愛川町から通う80代の男性もいるという。

 妻と子ども3人で暮らす蘭さんが、初めて山北町にやって来たのは2008年6月。地元の山北工業クラブと神奈川県、山北町が開催した若手作家による滞在型彫刻展「Wood Voice vol.1」に知人を介して招かれ、参加したのが始まりだった。

 東京芸大大学院を卒業し都内の美大予備校で講師をしていた蘭さんは、28歳で新規開校の美大予備校で校長に就任。同世代の講師15人とともに生徒150人を指導していた。

 知人の紹介で山北へやってきた蘭さんは約2カ月、町に滞在して彫刻展に参加。そのまま山北に移住した。「材料となる間伐材がいくらでもあり役場や地域の皆さんも温かくしてくれた」のがその理由だ。

 地元工業者や役場が移住を全面サポート。県の事業で足柄上1市5町に計203体のサインアートを設置。地域の行事にも参加する。昨年は3人目の子どもが生まれ、今年は家を新築するなどすっかり定住した。

日本らしさを

 チェンソーアートはアメリカやヨーロッパで40年の歴史があり国内では2000年に愛知県東栄町で競技大会が始まった。現在は東北地方や北海道、九州でも競技大会が開催され競技人口は100人ほど。

 6年前に、チェンソーを使い丸太を彫刻するチェンソーアートを町役場職員に教わりすぐに作家を訪ねた。「じっくりと掘る彫刻とは違いスピード感があった」とその魅力にはまった。

 蘭さんは今年6月、発祥の地、東栄町で開催された競技大会で最高栄誉賞のマスターズチョイス賞を受賞。夏から秋にかけて国内を転戦し8月には英国スコットランドで開催される「第12回イングリッシュオープンチェンソーカービングコンペティション」に出場する。13カ国32人が出場する英国では「風神雷神や仁王像など日本らしい作品で挑戦したい」と話す。

町も支援

 蘭さんのアトリエは丹沢湖の湖畔にある。町が旧キャンプ施設を提供し、森林組合や地元の林業者が間伐材を提供してくれる。蘭さんは「自然の中で人があまり来ない場所なので騒音の迷惑もかからない。材木も皆さんが気にかけてくれてとてもありがたい」という。

 チェンソーアートはスポーツ性の高い「競技」として世界各国に普及しているがデッサンができる美大卒のアーティストが活躍する例はそう多くない。林業に用いるチェンソーを彫刻に活用し、日本を象徴する仏像で大会に挑む蘭さん。海外でのパフォーマンスで活躍の可能性を秘めている。

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