長津田駅北口から歩いて3分、50年以上長津田を見守ってきた喫茶店「ウェーク」の店主吉井利夫さん(95)は、重巡洋艦「妙高」に乗り組み、1944年のレイテ沖海戦を経験した元「海軍特別年少兵」。「妙高に乗っていた仲間はみんないなくなってしまった」。そう語りながら、当時を振り返った。
海軍特別年少兵に志願したのは15歳の時。高等小学校卒業後、勤め先の元海軍兵の上司から勧められたのがきっかけだ。「年少兵になれば、勉強できると聞いて従兄弟と志願した」と話す。
長崎県佐世保市の相浦海兵団に入団した吉井さんを待ち受けていたのは、厳しい教育だった。テストで悪い点数を取ったり、時間に遅れると「精神注入棒」でたたかれるため、「夜も消灯後に豆電球の周りに何人も集まって必死に英単語の勉強をしたよ」と語る。
ところが戦況が悪化し、年少兵の教育期間が大幅に短縮。吉井さんも横須賀市の海軍学校で電気の技術をわずか3カ月ほどで学び、年少兵になって1年後の43年に「妙高」の発電機室に配属された。発電機室は地下3階にあり、「攻撃を受けたら逃げられるか分からない。覚悟は決めていたよ」と話す。
実際、レイテ沖海戦では、発電機室近くに魚雷が命中。部屋が浸水し、下半身が海水に沈んだというが、「若かったから、何とかはしごを伝って、天井から脱出できた」と思い出す。
戦争が終わり、日本に帰国後は、商売の勉強を始め、百貨店や家具屋の事業に成功。70年に長津田に家具屋「保土谷家具」と喫茶店「ウェーク」を開店した。現在はひ孫と会うのが楽しみだという。
吉井さんは戦争について「(国を思う)気持ちは大事だが、自分たちから起こすことはダメ。それは現代でも同じ」と力強く話した。
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