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港北区 文化

公開日:2025.07.22

港北区在住五大路子さん
地元から文化紡ぐ
「夢座」立ち上げて26年

  • 「横浜ローザ」の舞台=横浜夢座提供

 港北区在住の女優・五大路子さん(72)は、「横浜夢座」の座長として、横浜を題材にした作品を演じている。同劇団を旗揚げして26年。五大さんに、情熱をもって発信し続けられる秘訣を聞いた。

 五大さんは、NHK朝の連続テレビ小説『いちばん星』で主役デビューし、1999年に横浜夢座を旗揚げした。これまでに、新国劇年間大賞や神奈川文化賞、東久邇宮文化褒賞、地域文化功労者表彰など、さまざまな受賞歴を持つ。順風満帆に見えるキャリアの裏には、挫折から生まれた「私にしかできない表現」への強い思いがあった。

「横浜ローザ」 誕生

 舞台女優として稽古に励んでいた五大さん。帝国劇場出演を控えた時期に、突如右足が動かなくなり、舞台を降板せざるを得ない状況に陥った。「もう二度と舞台には立てない」と絶望の淵に突き落とされたという。その後、闘病生活を終え、再び地面に足をつける喜びを知った時、冒頭の「私でなければできない表現をしたい」という気持ちが芽生えた。

 回復後の初仕事は、1991年に行われた横浜開港記念みなと祭の審査員だった。そこで出会ったのが、「横浜ローザ」のモデルとなった「メリーさん」。直接的な言葉はなかったものの、「あなた、私が生きてきた今までをどう思うの。答えてちょうだい」という声が聞こえたかのように感じたという。それから、メリーさんが訪れたであろう場所に赴き、痕跡を辿り、その人生を紐解いていった。これが、五大さんのライフワークとなるひとり芝居「横浜ローザ」誕生のきっかけとなった。

わが街から発信

 「横浜ローザ」を演じている中で、「横浜から文化を発信したい」という気持ちはさらに強くなった。当時、横浜は地方公演の地と見なされていたという。「生まれ育ったわが街、エネルギー溢れる横浜から発信を」と志を抱き、「横浜夢座」を立ち上げた。

 設立当初は資金もノウハウもない状態だった。しかし、五大さんの思いに共感した市民たちとの”夢”を資金に、市民の実行委員会としてスタートした。以降、横浜のさまざまな歴史や文化を掘り起こして舞台化。膨大な資料調査に加え、実際にその時代を生きた人々に直接会い、話を聞くことで、文字だけでは伝わりにくい「生きた歴史」を作品に落とし込んでいる。

心が肥沃なら喜び尽きず

 五大さんは、ドラマ『北の国から』などの脚本家・倉本聰さんの「生きている限り ときめきたい 心が肥沃であれば喜びの種は尽きない」という言葉に支えられたという。コロナ禍で芝居などができない状況に陥ったが、この言葉が心に沁み、自身を奮い立たせた。

 五大さんにとって、これは”魔法の言葉”。年齢に関わらず、心が豊かであれば、新しいことへの挑戦や喜びは尽きることがない。この言葉を胸に、これからもわが街から発信し続ける。

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