認知症の妻の介護体験談を区内各所で語る 山根 越夫さん 葛が谷在住 70歳
大きな器で人に寄り添う
○…ケアプラザ職員の勧めで約2年前から、認知症カフェや都筑警察署などで講演を行っている。家庭的で料理上手、身なりの美しかった妻の様子に違和感を覚え「認知症では」と思い始めたのは約10年前。文献や本を読み漁り、治療を開始するも40年以上連れ添った妻の変貌に戸惑った介護生活。医師としての助言と夫目線の経験談は反響を呼んでいる。「専門家ではないことに迷いもあったが自分の言葉が誰かに寄り添えるかもしれない」
○…大阪生まれ京都育ち。母の実家が病院だったことから、小学校の作文に残した「医者になる」の思いは強く、京都府立医科大に進学した。入学早々、研修医制度改善を求める大学紛争が勃発し徹夜でデモに参加。「社会のことを真剣に考えた。生活の綱だった麻雀の気力も必要だったから半分は寝てたけど」と学びに遊びに全力だった青春時代を笑顔で振り返る。
○…「器用な手先を生かして社会の役に立ちたい」と医師を志し外科医として30年。山一抗争の発砲事件や阪神淡路大震災などに遭遇し、第一線で治療に当たった。管理職時代に病院の経営改善を任されることもあったが、常に心にあったのは「現場に立ちたい」という思い。帰宅できない激務が続いても「つらい」と思ったことは一度もない。「外科医は天職。人の痛みに寄り添うことのできる医者でいたかった」
○…28歳の時に2歳年下の公子さんと結婚。後輩医師を自宅に連れ帰ると食卓いっぱいの料理でもてなし、震災時には近所の公園で積極的に炊き出しを行う妻だった。介護に専念するため6年ほど前に息子のいる都筑区へ。「妻が自分のことを忘れることもある。こたえる。しんどいし、思いが通じずに何度も心が折れた。それでも、妻の笑顔に支えられている」
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