コラム「学校と社会をつなぎ直す」【1】 学校改革がここまで求められる理由 桐蔭学園理事長 溝上慎一
近年の学校教育改革は学校と社会をつなぎ直すためになされている。かつては良い高校、良い大学、良い就職といった人生成功の方程式があった。それが必ずしも成り立たなくなって、学校から社会への「トランジション(移行)」に重きを置いた学校改革が始まった。1990年代末のことである。
この改革の本質を理解したい。1つに、基礎的な知識や理解は必要である。これまでの偏差値教育を転換するからと言って、基礎的な知識や理解が落ちることは致命的である。2つに、成績が良いだけで、良い大学に進学するだけで、社会で力強くやっていけるとは限らないという事実を認めることである。
20年間、京都大学で教員をし、卒業生を見てきて、専門家として全国の大学生を見てきて、そのデータと経験から言っている。基礎的な知識・理解をふまえつつも、課題に対して、自身の疑問や「こう思う、ああ思う」、大学生くらいになると、「この知識や議論はここに繋がるのではないか」「こういうことが考えられないか」と、知識理解に合わせて、自分の考えや疑問を加える、という態度や能力が求められている。これを育てようと思えば、グループワークや発表(アクティブラーニング)を多少なりとも学習に加えていくことは必然である。
12回の連載である。社会とつなぎ直すために今学校で起こっていることを小学校から大学までの視野でお話ししていく。
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