都筑区 コラム
公開日:2021.06.10
大正末期〜昭和の北山田から 第67回
都筑区の歴史を紐解く
文・絵 男全(おまた)冨雄(『望郷』から引用)
故郷【2】
心の環境は道は悪くてもよかった。
造成が進み、ガス、水道完備した構造だけは環境の良い街ができたが、人情も心の環境も地下に埋まってしまった。
毎年盆の近くになると、夕方、蛍の群棲(ぐんせい)に団扇(うちわ)や竹ぼうきを子供らは振りかざし遊んでいた。
あの蛍は何処。神秘的な蛍の自然の営みを知らぬ、今の子らはかわいそうだ。
山あり谷ありの故郷には、他人があって個人が生活できる風潮(ふうちょう)があり、整然とした街には、自分が中心に世の中が動くと思っている人が多い。
この街も幾星霜(いくせいそう)かさねれば、第二の故郷になる。時間がたてば人情も芽生え、自己過信も薄くなるだろう。昔の心の環境が、よい故郷が、再生されることを期待いたします。
=完
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