コラム「学校と社会をつなぎ直す」【15】 地域社会づくりを担ってきた学校 桐蔭学園理事長 溝上慎一
これまでの連載では、子どもの学びを社会に繋げて学校教育を再構築する話をしてきた。ここからしばらく地域社会に対して学校がどのような役割を担ってきたか、これから担うことができるかをお話していきたい。
学校は子どもを大人に向けて育てる教育機関だと多くの人が思っている。しかし、かつて学校は地域社会づくりの積極的な社会的装置でもあった。家同士が100mしか離れていないのに隣の学校(あるいは隣の市区町村)になるといった学校別の区画整備は、今でも普通に見られる分かりやすい一例である。明治期の公(学校)教育の構築とともに進められた社会整備の一つでもある。
運動会は小学校教育における体操の普及とともに全国に広がって行われるようになったが、それは単なる体操やスポーツ競技の大会にとどまらず、大人を巻き込んで祭りの性格を持った地域の伝統行事としても発展した。地区対抗の競技を通して、他の地区との差異を意識させ、ある地域の住民であるアイデンティティを強固に意識させていく。運動会はそのような社会的機能を持ち合わせていた。
歴史を紐解けば、学校が単なる子どもを育てる教育機関ではなく、地域の人びとを寄せ集める社会的な結節の場であったことが見えてくる。この歴史的知識を活かして、地域創生に向けて、学校が地域づくりに積極的に関わるという考えを持てないものだろうか。
(次回へ続く)
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