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公開日:2012.01.19

三行に込めたママの思い
上白根の松本さん 「滑膜肉腫」乗り越え

  • 「ママが帰ってきてうれしい」と話す桜輔君

 昨年10月、横浜市PTA連絡協議会主催の「三行詩コンクール」で会長賞を受賞した松本久美子さん(33)=上白根在住。応募当時、松本さんは「滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)」という大病と闘っていた。たった三行の言葉だが、その中には、かけがえのない息子への思いがつまっている。



 「こんなからだになってごめんね でもね、7歳のあなたの手を握ると愛おしくて それがママを強くする」―。「桜輔のママ」という名で応募した三行詩コンクール。これまで詩を書いたことは一度もない。それでも筆をとったのは、「桜輔に何か残したい」という母親としての思いからだ。



 病は突然やってきた。一昨年の暮れごろから、微熱やせきなど風邪のような症状に見舞われた。その後も症状は引かず、昨年1月に精密検査を受けたところ、右側の肺に14cmの悪性の腫瘍が確認された。診断結果は、「滑膜肉腫」。「1年持たない」。それが医師の診断だった。



 滑膜肉腫とは膝や肘などの関節にできることが多い悪性の腫瘍。発症率は10万人に1人くらいで、国内での症例は100人に満たない程度と極めて稀な病気だ。診断を受けた時、すでに病状は末期。大きくなった腫瘍はろっ骨から出ている状態。「なんで私?」。悔しさと悲しさがあふれた。



 「治療法はない」と、病院はどこも門前払い。「絶対に助ける」と夫・洋輔さんも病院探しに奔走した。そんな中、治療の可能性を示してくれたのが、国立がん研究センターだった。治療法は毒性の強い抗がん剤治療で、「過酷を極め、命を落とすこともある」。それでも、「家族のため」覚悟を持って、闘病を決めた。



 投薬により、毛という毛は全て抜け、「尋常でない」吐き気との闘いの日々。治療を始めて4週目、回復は難しいと言われていたにも関わらず、医者も驚くほどの効果を見せた。手術も無事成功し、10月末に長かった入院生活を終えた。



「当たり前が」幸せ



 5年間は再発の可能性があるため、現在も定期検診に通っている。今年に入ってから、ようやく薬の副作用も落ち着き、平穏な日々を過ごせるようになった。「家族と過ごせること、笑えること。当たり前のことが本当に幸せです」。息子の桜輔君は「ママのご飯が食べられてうれしい。一緒にいろんなところに行きたい」とにっこり。



 死の恐怖を感じながら病床で書いた三行詩は、桜輔君への未来のメッセージ。「今はわからなくても、将来『お母さん、あの時こんなこと思ってたんだ』って知ってもらいたいですね」と明るく笑う。



 「病に苦しむ人の希望になれば」と取材に応じてくれた松本さん。「生きたい希望があれば、運命はついてくる。あきらめないでほしい」と語った。

 

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