戸塚区・泉区
公開日:2021.10.28
とつか歴史探訪
■〜旧東海道・戸塚宿を訪ねる〜第70話 〜二十三夜塔と勢至菩薩〜
国道1号の平戸交差点付近にある浄土宗光安寺の裏手墓地の片隅に大理石に囲まれた勢至菩薩を刻像とする二十三夜塔が鎮座しています。像の左に「寛文十年」(1670)、右に「奉供養廿三夜講」の銘があり、二十三夜塔として市内最古とされています。合掌は欠損していますが、面長の勢至菩薩像の表情は穏やかで心を和ませてくれます。この二十三夜塔は永谷村の人々によって近くの地蔵院に建立されましたが、道路工事のため現在地に移されたそうです。
戸塚の街を歩くと路傍に庚申塔、道祖神、馬頭観音の他に「二十三夜塔」などと刻まれた石碑を時々目にします。二十三夜塔は月待塔(つきまちとう)の一つで、旧暦の23日に「講中」と呼ばれる仲間が集まり、飲食・読経などをして月を拝み、悪霊を追い払うという月待行事を行って、その記念に建てられました。月待行事は室町時代に始まり、江戸時代から昭和初期にかけて民間信仰として日本各地に広まり盛んに行われ、二十三夜のほかに十五夜、十六夜などがありました。なかでも下弦の月は二十三夜の午前0時頃に出始め勢至菩薩の化身と信じられ、暗闇で見る幻想的な月の形(左半月)が信仰に相応しく最も一般的になったようです。
勢至菩薩は知恵の光をもっており、全ての苦しみを無くし、限りない力を与えるといわれています。ちなみに勢至菩薩は阿弥陀三尊の一つで阿弥陀の右側の脇侍となっています(左は観音菩薩)。勢至菩薩像は合掌し、冠に宝瓶を乗せているのが特徴です。
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