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戸塚区・泉区 社会

公開日:2025.12.04

「8050問題」 連載【4】
「こころの救済を」
上柏尾町 光照寺 宮本住職

  • 希死念慮を持つ人の相談を長年受けてきた宮本住職

 80歳代の親が、50歳代の子どもの生活を支える「8050問題」。背景には親の高齢化、子どもの長期間にわたるひきこもりがある。親亡きあと、子どもがどう生きていくのかなど課題は数多い。

 内閣府が今年4月に公表した、全国で孤立死した人の推計値は2024年1年間で約2万人。60歳以上が約8割を占めたものの、50歳代も2740人いたという。この連載では、こうした問題の改善に取り組む団体・個人に、54歳の本紙記者がインタビューを行う。

 人が社会から切り離された状況に長く置かれた場合、精神的に追い込まれていくことは想像に難くない。日本メンタル協会認定のメンタルスペシャリストで、希死念慮がある人の相談を長く受けてきた光照寺(戸塚区上柏尾町)の宮本龍太住職に「こころ」の守り方を聞いた。

――どのような相談を受けますか。

 「自傷行為をされている中年男性のお話を聴いていたことがあります。会社の人間関係で悩んでいるというものでした。出社するのが辛い。しかし家族を養っており、安易に辞められる状況ではないという方でした」

――辛いですね。

 「無責任で申し訳ないけど、そこまで追い詰められているなら退職も視野にとお答えしました。でなければ休職しなさいと。自死の危険性があるからです。私の寺でもいいし、心療内科でもいい。自分の悩みを吐き出せる場を設けてほしいとアドバイスしました」

――中高年、特に男性は悩みを打ち明けられない印象があります。

 「孤立が一番心配です。エスカレートしていって、人間関係がうまくいかず、引きこもることにつながっていく。誰かと共有感を持てるようにすることが大切です。

 ここでちょっと立ち止まって考えてみましょう。引きこもっている方も、バリバリ仕事してる方も、実はそんなに変わらないのではないか。ほんの少しのきっかけで『今』があるから。苦しい状況にある方は自分を恥じる必要はない。人間は生きてるだけで尊いんです。それがお釈迦様がいう『天上天下唯我独尊』です」

――『今』、苦しい人はどんな気持ちで過ごせばいいでしょうか。

 「なかなか社会に出られないなら『引きこもっていてもいいじゃないか』と考えてみる。『3度3度のご飯が食べられ、お風呂に入れてるんだから、幸せだと思いますよ』と私は伝えます」

――しかし、ご家族や周囲は心配です。

 「以前、不登校の高校生の相談を受けていたことがあります。毎日ゲームばかりをやっていると親御さんは心配されていた。しかし私はその人を否定しませんでした。十分苦しんでいるから。お寺に遊びに来てもらい、一緒にお茶を飲み、雑談する。その日は苦しくない。その連続が『今』です。その高校生は学校に戻りました」

仏教の役割とは

 「宗教の果たす役割は本当に大きいと思います。私の立場で言えば、仏教です。残念ながら本来の仏教の役目を果たせていないというのが私の現状認識です。僧侶はお葬式、法事で御経をあげるだけでなく、本当に困っている方の『こころの救済』をしていかなければいけない。そう考えています」

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