記者が訪ねる かなざわの名刹 第17回 吼月山 泥牛庵(でいぎゅうあん)
一風変わった寺号の由来は、禅語にしばしば登場する「泥牛」という言葉。泥は煩悩、牛は仏にたとえられ、煩悩にとらわれぬ境地で悟りを得ることを意味する。開山が丑年だったことや、干潮時の瀬戸・六浦の景色などにも重なり、この名前となった。
寺を開基したのは、鎌倉末期の執権・北条高時。鎌倉攻めで窮地に立った高時が、持仏・聖観世音菩薩を護ってほしいと、南山士雲禅師にこれを託したのが始まりという。
現在も本尊としてまつられているこの像の脇には、立派な地蔵菩薩が。これは、室町時代の武将・小山若犬丸が六浦に建てた地蔵堂の本尊だったものだ。若犬丸は、もと下野国小山(現在の栃木県小山市)の城主だったが、足利氏に追われ、2人の子どもが六浦の海に沈められ処刑された。これを悲しみ、供養のために地蔵堂を建立。以来、「子育て六浦地蔵尊」と呼ばれ、親しまれてきた。お地蔵さまの顔は、悲しみを包み込むような優しい表情。いつの時代も変わらぬ親子の絆を見守り続けている。
【本尊】聖観世音菩薩
【宗派】臨済宗円覚寺派
【住所・電話】金沢区瀬戸11の15 【電話】045・701・6831
(資料・金沢区仏教青年会
「かなざわ霊場めぐり」1994年)
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