六浦東在住の作家で、脳性マヒのため四肢に障害がある中村勝雄さん(54)は、自身の作品を通し障害者でしか語れないメッセージを綴っている。12月3日から9日(月)は「障害者週間」。障害についての考えを聞いた。
金沢区における障害者手帳の発行数は8075。これは区内人口の約30人に1人の割合だ。特に身体障害者手帳の発行は5582と最も多い。
区は誰もが過ごしやすい環境づくりの一環として、今年3月に「金沢文庫駅・金沢八景駅周辺地区バリアフリー基本構想」を策定。道路の拡幅や点字ブロックの設置、旅客施設や公園の整備など、障害者らが障壁を感じずに過ごせる街づくりを進めている。
「昔よりもバリアフリー環境が整い、障害者の生き方の幅が広がった」と話すのは、作家の中村勝雄さんだ。一方で「それでも街に出てくることをためらう障害者は多い」と指摘する。
中村さんは重度の脳性マヒで、生まれつき四肢の自由が利かず、食事も着替えも一人ではできない。そんな状態では、玄関の小さな段差でも乗り越えるのは至難の業。「外に出るまでに疲れてしまう」のだという。また障害者の友達の中には、周囲の好奇の目が気になり、外出をためらう人も少なくない。「たとえ外の環境が良くなっても、そもそも外に出る気が削がれてしまう気持ちはよくわかります」と話す。
それでも中村さんは、あえて家に閉じこもらないことを選ぶ。「積極的に外に出てアクションを起こすことで何かが変わることを知った」と自分の経験を振り返る。
木下監督との出会い
かつては駅にエレベーターもなく駅員に「なぜ車椅子の人が電車に乗るんだ」と嫌味を言われることも。「どうせこの身体では仕事もあるわけない」という諦念があったという。「せめて体の特長を生かした個性派俳優にでもなってやろう」と、様々な映画監督に「おれを使ってくれ」と手紙を送った。それがたまたま、映画監督の故・木下惠介氏の目に留まった。俳優にはなれなかったがシナリオを教わることになり、物書きとしての人生が始まった。この経験で、辛くとも外に出ることの大切さを知ったという。
99年には単身でハワイと香港へ旅行し、01年に旅行記『パラダイスウォーカー』を出版した。このエッセイを読んだ女性に見初められ結婚。2人の息子と4人、幸せな家庭を築いている。
現在、自身の経験や、1歳2か月で亡くなったダウン症の長男との思い出を元に「出生前検診」をテーマとした小説を執筆中だ。
中村さんは厳しい環境の中でも、あえて外に出て、自分を変えてきた。その経験を作品にすることで「自分もがんばってみよう」と思ってもらうことが目標だ。これからも特殊な経験でしか語れないメッセージを訴え続ける。
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