街路樹【8】 芳香な「カツラ」 黄葉した葉はカルメラの香り 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
わが国には、クスノキ、ニッケイ、モクセイ等の芳香な樹木は数多くありますが、紅葉も美しく香りも素晴らしい樹木は、そう多くはありません。「カツラ」はまさにその第一候補に挙げられるでしょう。
カツラは温帯のブナ林帯に生育する樹木で、横浜では街路樹や公園樹、庭木としてよく見かけます。紅葉の時期になると美しく黄色に色づき、葉には昔懐かしいカルメラの香りが漂います。横浜の気候では、鮮やかな黄色には色づかず、多くは黄褐色になります。
語源は「香出」(かず)からで、中国名「連香樹」、中国では秋に葉を集めて乾かし、粉にして「お香」をつくったので、「コウノキ」とも呼ばれています。和名「桂」ですが、中国で桂はモクセイ類の総称を表し、中国の観光地「桂林」は、カツラの林ではなく、モクセイが多く茂る街を指します。ちなみに「圭」は香りが良いことを意味します。
万葉集や日本書紀にも登場し、京都賀茂神社での祭式には神木として用いられています。神話で有名な「海彦山彦」の中にも、「海神の宮に釣り針を探しに行った山幸彦は、井戸の脇に生えている”湯津香木”(ユツカズラ)に登って、水を汲みに来る侍女を待つ」とあります。湯津香木はカツラのことで、カツラは古から日本人に馴染みの深い樹木の一つです。
次回は「エノキ」の予定です。
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