舞台化されることが決まった小説、『黄金町パフィー通り』原作者の 阿川大樹(たいじゅ)さん 西区みなとみらい在住 61歳
「自分の力で世の中変わる」
○…「舞台化は原作者として嬉しいし、楽しみ。作品が自分の手から離れると思うと怖いけど、社会の中でどう変化するか、わくわくする」と笑顔を見せる。同作は黄金町を舞台に、違法風俗街がアートの街に変わっていく様子を地域の人々などへの取材を参考に描いたもの。
○…横浜には約20年前に引っ越してきた。黄金町の存在を知ったのは2000年頃、偶然散歩をしたときだ。「不思議な雰囲気の街で、気がかりだった」。街に引き寄せられるように09年から黄金町に事務所を構える。地域の人に話を聞くと、地上げ屋が住民に相場よりも高く土地を買い取る交渉をし、昔から住む人は、いつ両隣が違法風俗店になるか、戦々恐々としていたそう。「自分が黄金町を故郷とする住民の立場だったら、切ない気持ちになる。その事実を知った小説家として、書く使命がある」と、いつか作品にしたいと思っていた。
○…出身は東京都。父が商社に勤めていた関係で、子どもの頃は引っ越しが多かった。「父はほとんど家にいなかった」というが、「僕の議論には深夜1時から明け方まで付き合ってくれた。人間とは何かとか、政治の話とか。自分の頭で考える力が養われた」。東大を出てからは、半導体の技術者としての道を18年歩んだが、中学生の頃からの小説家という夢を捨てきれず、挑戦。96年に会社を辞め、「500万の貯金が150万になったらやめよう」と、ベンチャー企業の社外取締役を務めながら、出版社に原稿を送る日々を過ごす。05年に奮闘するエンジニアを描いた『覇権の標的』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞優秀賞を受賞し、小説家デビューした。
○…年収は会社員時代の10分の1程度だというが、「やりたいことができているので、幸せ。環境のせいにしないで、自分の力で世の中を変えられるということを作品を通して描きたい」と笑顔で話す。
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