本牧 気まぐれ歴史散歩 57 『山本周五郎のさんぽ道』
この3月、本牧で暮らして数々の名作を著した文豪・山本周五郎の功績を後世へ伝え残そうと、本牧三之谷の本牧通りに記念板「山本周五郎 本牧 道しるべ」が建立されました。
周五郎作品は、今もTVドラマやラジオ朗読でオンエアされ、短編も再編成されて新刊として販売されています。これは作品に描かれている人々の喜びや悲しみ・信念・真心が、現在にも通じるものであり、私たちの心に響くものだからだとも感じます。
間門の海辺の丘の上にあった旅館・間門園で執筆をしていた周五郎は、散歩を日課としていました。10時頃に間門園を出て、着物姿に下駄履きで歩くその姿は、本牧や根岸に住む人たちにとっては日常の光景でした。周五郎は散歩をしながら物語の構想をまとめたりしていたと思われますが、作品によく登場する散歩ルートの1つに、間門園から豆口台へ登って根岸共同墓地へ向かい、そこから伊勢佐木町方面へと右手に下るか、新川町にあった日本橋花柳界へと左手に下るルートだったのではないかと思われるルートがあります。
大切なのは自分の地位や名声・財産のためではなく、弱者に寄り添い、自分が世の中のために少しでも役立って生きているかということで、死ぬときには少なくとも惜しまれる人間になるだけの仕事をしてゆきたい...そのように語る周五郎の思いを心に刻みながら、私も周五郎が歩いた道をたどって、共同墓地の方へ進みたいと思います。(文・横浜市八聖殿館長 相澤竜次)
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