報道写真家として被災地の様子を記録し続けている 浜口 タカシさん 吉野町在住 80歳
悲しみと希望を伝え続ける
〇…東日本大震災の被災地で撮影した写真の作品展を12月10日まで関内で開催している。岩手、宮城、福島の3県を6月から9月にかけて4回訪れ、計11日間撮影した。津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田や気仙沼の様子を目の当たりにし「津波が全部をさらい、戦後の焼け野原のようだった」と振り返る。
〇…1964年の新潟地震に始まり、95年の阪神・淡路大震災など、数々の災害現場を写真に収め、被災者へのインタビューも行ってきた。今回、被災地では目を背けたくなる場面に何度も遭遇した。「畏敬の念を抱きながらシャッターを切った」。72人が死亡・行方不明となった南三陸町の病院では手向けられた花束に涙した。泥の中にぽつんと置かれた花束を収めた1枚からは、言葉にできない悲しみが感じられる。がれきの上に泳ぐ鯉のぼりを見た瞬間は「『がんばろう東北』と心の底から叫びながら、夢中でシャッターを切った」。撮影では「どれだけ相手の気持ちになって撮れるか」が重要だという。
〇…図画が得意な少年が初めてカメラを手にしたのが17歳。その後、南太田でカメラ店を営み、店先に町内のまつりなどを撮影した写真を飾り、それが評判を呼んだ。「写真を毎週変えないと『まだか』と言われた」と笑う。以来、イベントの撮影に力を入れた。同時に安保闘争や中国残留孤児などの社会問題を最前線で取材、撮影。報道写真家としての実績を重ね、97年には横浜文化賞を受賞した。
〇…被災地入りの背中を押してくれたのが妻と娘。「行ってきて」と旅費まで用意してくれた。東日本大震災の記録をまとめた写真集のあとがきには「25冊目にして初めて2人への感謝の言葉を入れた」と照れくさそうに話す。「1万文字の言葉より1枚の写真―」。震災の教訓を伝えるために「復興へ向けた”希望”を撮りたい」と力強く語り、東北を応援する気持ちを原動力にカメラを構え続ける。
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