家具職人として「横浜マイスター」に選ばれ、優れた技術を伝えている 内田 勝人さん 井土ヶ谷上町在住 54歳
120点目指す妥協なき職人
○…横浜を代表する職人に選ばれた。かつて、職場を共にした兄弟子が第1期のマイスターとして活動するのを目の当たりにしており、果たすべき役割と責任の大きさは知っている。「技術を子どもや地域に伝える義務がある。横浜に恩返しがしたい」と決意を語る。
〇…「鉛筆1本で写真を忠実に再現できた」という少年時代。デザインに興味を持ち、中学生で「既製服に満足しなかった」と刺繍やラインを加えて着ていたほど。高校卒業後、ファッションデザイナーに。しかし、分業制の服製作に疑問を感じる。「全部、自分で作りたい」。そう思った時、一人の家具職人が黙々と仕事をする様子をテレビで見て転職を決めた。4年働いた会社を辞め、職業訓練校に通う。27歳で元町の家具店に入社。その工房の一番奥にいたのは、テレビで見たあの職人。「天命だと思った」と振り返る。
〇…技術指導はおろか、あいさつさえない職人の世界に驚いた。ここでは先輩は絶対的存在。1時間かけて準備した機械を使おうとしたが、操作直前に先輩がやってきて、泣く泣く場を譲ったこともある。「合格点が70点なら普通の職人は70点の仕事をする。でも、自分は100点を目指す」。15年以上働いて周囲が認める技術を手にした。「昔、100点だと思っていたものが今は70点だと感じる。120点を目指さねば」と製作途中のひらめきでサイズを設計とは異なるものにするなど、妥協を許さない。
〇…9年前、仲間と中区新山下に家具工房「蓮華草」を立ち上げた。「家具作りを地場産業にしたい」と6年前から希望者に製作技術を教える。「1週間のうち、4日は仕事、3日は趣味で家具を作っている」と笑う。休みは皆無だが、清水ヶ丘公園や大岡川沿いを散歩して気分転換。3人息子の長男が仕事を手伝う。「お客様の心の中にあるものを形にしたい」と、品質にこだわる職人が魂を込めた家具を生み出していく。
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