〈連載〉さすらいヨコハマ㉑ 鶴見線の中で 大衆文化評論家 指田 文夫
横浜を走る鉄道で、もっとも興味深いのはJR鶴見線だろう。ここには、一駅しかない大川駅―武蔵白石駅もあり、一般の客はホームから外に出られない海芝浦駅、新芝浦駅もあるが、海芝浦駅から海を眺めるのも、なかなか楽しい。
この鶴見線は、1943年までは私鉄で、今も横浜市と川崎市でバス事業をやっている臨港バスの元となる鶴見臨港鉄道が26年に作った。
このJR鶴見線が出てくる映画がある。
たぶん、世界の映画で唯一、主人公2人がろうあ者という松山善三脚本・監督の61年の『名もなく貧しく美しく』。この映画には、多数の電車などの映像があるが、鶴見線も扇町駅、鶴見小野駅などが出てくる。中に小林桂樹が高峰秀子に手話で愛を告白するシーンがあり、映画史上に残る名場面である。残念ながら、この車両越しの告白シーンは、スクリーンプロセスとセット撮影だが。
(文中敬称略)
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