横浜市の林文子市長は8月22日、カジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致を正式に表明した。カジノ納付金などによる最大、年1200億円の財政貢献が主な理由。場所は中区の山下ふ頭(約47ヘクタール)で2020年代後半の開業を目指す。一方、横浜港運協会は「ばくち場にしない」と改めて山下ふ頭への誘致に反対の姿勢を示した。
IRとはカジノや劇場、ホテル、国際会議場などが一体となった施設の総称。市はIR誘致の本格的な検討・準備を行うため、9月2日開会の市会定例会に2億6千万円の補正予算案を提出する。
経済効果を期待
林市長がIR誘致の最大の理由にあげたのが「経済効果」だ。市によると横浜市の人口は2019年をピークに減少に転じ、社会保障費の増加などにより、厳しい財政状況が見込まれる。こうした中、子育て、医療、福祉、教育などの行政サービスを維持していくため、市は大きな経済効果が期待されているIRが有力な選択肢と判断した。
IRの具体的な効果として市は▽観光の振興▽地域経済の振興▽財政改善への貢献――の3つを掲げる。
観光振興はIR区域内での消費額が最大7400億円、地域経済の振興では経済波及効果として最大1兆円規模に、そして、カジノ納付金や入場料収入、法人市民税などの市への増収効果が最大1200億円と試算する。
また、懸念の強いギャンブル依存症については昨年7月の基本法成立などを踏まえ「環境は整ってきた」と判断したという。今後は市民の理解が重要として全18区で市長出席の説明会を開く。広報よこはまなどで周知の後、今年度中に開催する。
港運協会「ばくち場にしない」
17年の市長選でIR誘致について「白紙」として3選を果たした林市長。22日の会見でその点について問われると「まだ決められないという意味での『白紙』だった」とし、誘致は否定していないと理解を求めた。
横浜商工会議所の上野孝会頭は市長の表明を受け、IR誘致を歓迎するコメントを発表。「持続可能な横浜経済を構築するためにはIRの誘致が有効な方策」とし、推進協議会を設置して誘致実現に尽力するとしている。
一方、山下ふ頭に拠点を置く事業者らからなる横浜港運協会は林市長の誘致表明翌日に会見を開いた。藤木幸夫会長は国際展示場やF1レースなどを盛り込んだ独自の「ハーバーリゾート」構想案を示した上で、「山下ふ頭をばくち場にしない。横浜の将来のためにいいねと言われるような山下ふ頭の守り方をしたい」と改めて反対の姿勢を強調した。加えて「私がしゃべるとリーダーになってしまう」と市民団体や政党と一体となった反対運動は行わないとした。
中区在住の女性は、IRについて「何とも言えない。市のためになるのか、ちゃんと見極めたい」と話していた。山下ふ頭の入口に位置する連合町内会の役員は「普段から行政の施策に協力しているのに、誘致についてもう少し説明があってもよいのでは」と語った。
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