政府が掲げる行政手続きのデジタル化に伴い、各自治体などでも押印を不要とする動きが進んでいる。市内では5月に危機関連保証認定がインターネット上で申請できるようになるなど「脱はんこ」のムードが漂う。
はんこ業者が加盟する神奈川県印章業組合連合会の副会長を務める大岡の「国峰印房」の國峯伸之さんに業界の現状や自身の考えなどを聞いた。
――デジタル化についてどう思うか。
「業務効率化や利便性を考えれば進めるべきで事業自体には賛成。一方、印章業界は”悪者”という風潮が高まり、自分たちの仕事が全否定されている感じが伝わってくる。『悪いものを作っている気がして心が痛い』と仕事へのモチベーションが下がっている職人もいる。Go Toトラベルの利用者に配られる電子クーポンが不正取得されるなど、デジタル化の落とし穴も見られる」
――地域の反応は。
「デジタル化を好意的に思う人もいれば、不安だという人もいて、半々といった感じ。南区は高齢者の割合が高い土地柄からか、インターネットをまともに使えないという声も聞く。誰かが置いてきぼりにならないように、しばらくはデジタルとアナログを併用し、徐々にデジタル化を進めていけば良いと思う」
意思表明の道具
――はんこの強みは。
「いまだに多くの人から”意思表明”に使うものとして受け入れられているという自信がある。婚姻・離婚届もオンライン化にするという話も聞くが、知人からは『一方の考えで勝手に籍を入れたり、抜いたりする問題も起こるのでは』という心配の声も聞く」
――業界全体としての政府への対応は。
「先日、全日本印章業協会の井孝生会長が河野太郎行政改革担当大臣と面会するなど、アクションは起こしている。私自身も『なぜ、はんこが必要なのか』をもう一度整理し、政府や行政の方と話し合いの場を作りたいと思う」
――伝えたいことは。
「先日、生後間もない赤ちゃんの印鑑を作った。ご両親からは『一生の思い出になった』と喜びの言葉をいただき、印章は事務手続きだけに存在するものではないことを改めて実感した。『はんこ』という日本の伝統文化を守り、後世に発信していきたい」
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