南区 経済
公開日:2021.08.19
<新企画>挑戦する事業者に聞く
コロナ下でも開店した理由
<1>南太田・コーヒー店「自家焙煎のあべちゃんコーヒー」
バス運転手から 趣味活かす
新型コロナウイルスによる先が見えない状況が始まり1年半。飲食店を中心に苦境に立たされている事業者は多い。その中で店舗をオープンしたり、起業する人もいる。台風並みの逆風が吹いているとも言えるコロナ下でなぜオープンを決めたのか。経営者らの思いを聞いていく。
仕事激減で決意
南太田駅そばの細い路地に6月にオープンした「自家焙煎のあべちゃんコーヒー」。その名の通り、焙煎機を使って提供するコーヒーがメイン。イートインのほか、豆の販売も行う。
店内にはカウンター席があり、その向こうで店主の”あべちゃん”こと阿部智剛さん(45)が注文を受けてから丁寧に一杯ずつ淹れていく。エチオピア、ブラジル、インドネシアなどのコーヒー豆が揃い、焙煎されたばかりの豆の香りが店内に漂う。
阿部さんは20代で憧れていたバスの運転手になった。「運転は楽しかったが、無事故でお客様をお届けする緊張感が徐々に強くなっていった」。そこをコロナが襲った。空港への運転を担当しており、バス便は激減。月の半分が休みになった。将来への不安もあり、退社を決めた。
7年前、鎌倉のカフェで見たマスターの楽しそうな姿が印象に残り、そこからコーヒーの焙煎を勉強した。機械メーカーが行う教室に通い、自家焙煎の技術を取得。今まで趣味としてやっていたことを商売にしようと思い立った。
周囲からは「何もこの時期に…」と言われたが、妻が背中を押してくれた。「チャレンジするタイミング」なのだと。自らが通った横浜商業高校(Y校)のそばの物件を借り、焙煎機も入れた。開業資金には会社員時代のボーナスなどを充てたが、不足分は融資を受けた。「金額は無理がない程度」と笑うが、一人で店に立つ責任を感じている。
在宅需要の高まりも追い風となり、豆を買い求める客が予想以上に多いという。自宅で淹れる人のために、カウンターに置かれたアクリル板越しに”実演指導”することも。リピート客も増えており、手応えを感じつつある。「コーヒーで一息ついてくれれば」との思いを強くし、至福の時間を提供する。
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