〈連載〉さすらいヨコハマ50 黒澤明と横浜 大衆文化評論家 指田 文夫
世界的な映画監督である黒澤明は、なにかと横浜と関係が深い。
彼の第一作『姿三四郎』の最初の撮影は、戸部の浅間神社で行われ、戦時中の『一番美しく』は、当時、戸塚にあった日本光学の工場が使われている。
最近、芝居にもなった名作『酔いどれ天使』の医師は、黒澤らが横浜で見た実在の人物がモデルである。ちなみに、この酔いどれ天使とは、志村喬が演じた医者の真田であり、三船敏郎の若いヤクザの松永ではないが、私も最近まで、三船のことだと思っていた。
黒澤作品で、西区と南区が舞台となるのが1963年の『天国と地獄』で、製靴会社重役の三船は、西区の高台に、貧乏な医師の卵の山崎努は、南区中村川の近くに住んでいる。この映画には、伊勢佐木町通りや黄金町の麻薬街、根岸屋を模した国際キャバレーなどが出てくるが、すべて東宝の撮影所に作られたセットで、横浜の実景ではない。(文中敬称略)
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