横浜市は８月30日、２０２２年度から25年度までの市政運営の指針となる中期計画の素案を発表した。山中竹春市長が「一丁目一番地」と位置付ける「子育て支援」のほか、38の政策を取りまとめ、昨年の市長選時に掲げた公約に道筋を付けた形となった。

人口減少に対応

　素案では、横浜市が人口減少局面を迎え、市税収入減や社会の担い手不足、市内経済の影響が将来的に想定される中、新たに中長期の基本戦略として「子育てしたいまち 次世代を共に育むまち ヨコハマ」を掲げ、38の政策を策定。特に子育て世代を呼び込むことに力を入れる。

｢３つのゼロ｣も

　山中市長が市長選で公約で掲げたものの、22年度予算には盛り込まれなかった「３つのゼロ」について、素案の中で考え方が示された。

　「子どもの医療費ゼロ」は、中学３年生までの医療費助成の所得制限や一部負担金の撤廃を23年度内に実施すると明記。「出産費用ゼロ」は、国が検討している出産育児一時金の増額を見極めながら、無償化を含む妊娠・出産・子育てにかかる経済的負担の軽減を図るとした。「敬老パス自己負担ゼロ」は、75歳以上の無償化を含め、「持続可能な地域の総合的な移動サービスの検討を進める」との記述に留めた。これまでの紙製パスを廃止し、10月からＩＣカード化されるため、利用実績などのデータを取得し、それを踏まえて判断するという。

給食、全員配達方式へ

　公約の一つだった中学校給食の全員実施は、民間業者が調理・配達する現行のデリバリー方式を維持した上で、全生徒・教職員に供給できる体制を25年度までに整える。現在の選択制から転換し、26年度から全員実施に踏み切りたい考えだ。

　給食の供給方法は、自校や近隣小学校で調理する方式や市内数カ所に調理センターを設けて配送する方式などを市教育委員会が検討してきた。しかし、費用や実現までの期間を踏まえ、全員実施にはデリバリー方式が最も実現可能性が高いとの見解を示していた。

収支不足１千億円

　一方、小児医療費助成の拡充に70億円、敬老パス無償化を実施した場合は80億円、中学校給食の供給体制準備などに90億円が必要。４カ年全体で試算される収支不足は１千億円と巨額だが、市は予算編成の歳出改革で捻出すると説明する。

　市長選で山中市長を支援した立憲民主党市議は素案について「公約を含め、着実に実現していく道筋をつけた」と評価。一方、山中市政に批判的な立場の自民党市議は「公約を実現するために予算を使い、新しい事業がない。成長戦略を考える上で問題」と語った。

　素案は市政策局政策課のサイトで公開中。９月15日から10月14日まで市民意見募集を行い、12月に原案を策定、市会に議案を提出する予定だ。