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南区 社会

公開日:2022.11.17

市敬老パス
IC化で利用状況把握へ
 開始1カ月半 紙製から変更で混乱も

  • 地下鉄の駅で読み取り機の位置を案内するスタッフ

 横浜市は70歳以上の希望者に交付している「敬老特別乗車証」(敬老パス)の利用状況を把握するため、10月から従来の紙製パスを廃止し、プラスチック製の「ICカード」を導入した。高齢化の進展によって事業費が増大し、制度維持へ向けた状況把握が目的だが、変更当初は地下鉄利用者から読み取り作業の煩雑さなどへの不満が相次ぎ、開始1カ月でシステムを変更する事態となった。市は「利用実態のデータを収集し、持続可能な制度設計に役立てたい」としている。

膨らむ事業費

 敬老パスは、高齢者の社会参加と福祉の増進を図るため、1974年に導入された。70歳以上の市民が所得などに応じて年間3200円〜2万500円を支払うことで、市内を運行するバスや市営地下鉄などが乗り放題になる。

 制度開始当初、交付者は7万人だったが、高齢化により年々増加。2020年度末には40万7千人が交付を受けた。事業費も21年度は126億5700万円。市税負担額は105億4700万円に膨れ上がっている。

 利用者が増加する中、市は19年に、制度のあり方に関する検討専門分科会を設置。敬老パスを持続可能な制度としていくためには、利用した日時、回数、交通機関などの実績を正確に把握する必要があると示された。そこで市はICカード化に踏み切った。

煩雑さに批判

 紙製に代わって導入されたICカードの敬老パスは、専用機器にカードを読み取らせる必要があり、地下鉄の自動改札は利用できない。一部の駅では改札から離れた場所にある読み取り機に気が付かず、新しいパスで自動改札を通過しようとする人が多くいた。読み取り機にかざした後、駅員がいる改札口でパスを見せる煩雑さにも批判が出ていた。市は当初からシルバー人材センターに依頼した「案内役」を利用者が多い20駅に配置したが、それでも「場所が分かりづらい」という不満の声があった。ある利用者は「最初からこうなることが予想できないのか」と市を批判した。

 市は11月1日から地下鉄全駅で、読み取り機の場所を有人改札窓口に変更した。市担当課は「使い方などの周知を徹底していき、早く慣れていただければ」と話す。

 山中竹春市長は75歳以上の敬老パス無料化を公約に掲げており、今回のICカード化で得られる利用実績などを踏まえ、持続可能な地域の総合的な移動サービスについて検討を進める考えだ。

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