タウン童話 『ふわふわ国』 絵・文 バタバタばーば(斎藤分町在住)
お空の上の雲の中には、ふわふわ人の国があります。「ふわふわ国」の人々は体が白くてふわふわっとしています。おとなりに行くのも、ふわぁっと飛んで行きます。お友達と遊ぶときもみんなふわふわ、ふわふわって浮いているので、ぶつかったり、けんかをしたりしてもちっとも痛くありません。ふわふわ人の子ども達は、よく変身ごっこをして遊びます。お魚になったり、恐竜(きょうりゅう)になったりして、誰が一番似ているかを競(きそ)って遊んでいます。毎日楽しくふわふわ遊んでいるのですが、ひとつだけとっても大事なご用があります。ふわふわ国の王様から言われている絶対命令(ぜったいめいれい)です。
それは下界(げかい)の人間の世界に雨を降(ふ)らせる仕事です。雨の日は葉っぱや虫や花やみんなが楽しみにしているので、休むわけにはいきません。大きなジョウロに水をいっぱい入れて、下の世界にまくのです。今日のお当番(とうばん)に当たった人は、お遊びをちょっとお休みしてジョウロでいっぱい水をまきます。春は2杯、夏は3杯、冬は水まきをするのも寒いので1杯しかまきません。そのかわり、秋には思いっきりたくさんまきます。夏になるちょっと前はみんな遊ぶことがないので、水まきがたのしい遊びのひとつになっています。だからちょいちょいおまけ気味にまいてしまいます。すると人間の世界では「毎日、雨でこまった」なんて言っているようです。でも、花達はいっぱいの雨で大よろこび。どんどん芽をだしたり花を咲かせたり、葉っぱの緑が濃(こ)くなって実を成(な)らせる用意(ようい)を始めるみたいです。
この間、やっと番がきたので、すっかり楽しくなって、いっぱいまいてしまいました。どんどん、どんどんジョウロに汲(く)んできてずいぶん長い時間まきつづけてしまいました。だって楽しくてやめられなかったんですもの。すると下の世界が大騒(さわ)ぎになってしまいました。街(まち)も道路(どうろ)も畑(はたけ)も水でいっぱいになってまったのです。人々は「台風(たいふう)だ」とか「嵐(あらし)だ」とか言って大パニックでした。
家が流れてしまった人もいました。山の泥(どろ)がくずれて家がつぶされてしまった人もいました。楽しさにつられて、ついやってしまったのですが、本当に申し訳ないことをしてしまったと思っています。もちろん雲(くも)の王様(おうさま)はこっぴどくしかられました。今は反省(はんせい)しています。「ごめんなさい、だって冬の間ずっと水まき遊びをがまんしてきたんだもの…。今度(こんど)は気をつけます」。今日もふわふわ国ではふわふわ人の子ども達が、水まきあそびの順番(じゅんばん)を待っています。
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