連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 ㊴春の海ににおう
私たち人間(ヒト)がこの世界で生きるということは、常にまわりを五感で知覚し、それに基づいて行動することを意味します。
視覚や聴覚だけでなく、その他の感覚も表現へのスタート器官であることは、においや音が忘れない思い出として心に残ることからもわかります。
御蔵島で合宿した頃の私は、朝早く外に出て、民宿の煙突から流れてくる薪を燃やす煙の目にしみるようなツンとくる青白いにおいをかいで楽しんだものでした。イルカの背が浮いたり沈んだりして現れる海辺に降りて行くと、胸いっぱいに潮の入った空気を吸い込むことができます。
いろいろなにおいが混ざりあった海辺の空気に包まれていると、島の至る所に自生しているサクユリの花、エビネの女王と言われるニオイエビネラン、海藻や魚、面白い形をした海の生き物たち、規則正しく繰り返す満ち潮などが思い出されるのです。
やがて君たちが大人になり、長い間イルカや海から離れていて久しぶりに海辺に帰ってくるようなことがあったなら、海のにおいを大きく吸い込んだとたんに、楽しかった思い出がほとばしるようによみがえってくるのではないでしょうか。
嗅覚というものは、ほかの物理的感覚よりも化学的で記憶を呼び覚ます力が優れていますから、この力を使うことは身体にとてもいいことだと思います。
この一年がみなさまにとって素晴らしい年でありますように。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一
(問)【メール】iwashige@gmail.com】
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