高津区 コラム
公開日:2023.05.12
不定期連載コーナー
「社史」探訪
第7回 社史で学ぶ「かまぼこの意外な歴史」
当館では6月17日(土)に、講演会・企業の足跡を知る第4回「鈴廣の歴史と受け継がれてきた伝統技術」を開催します。このイベントにちなんで、今回は水産加工食品業者の社史からかまぼこに関連するエピソードを探ってみました。気になるところをご紹介します。
きっかけとなった鈴廣かまぼこの『慶應・明治・大正・昭和そして平成へ』(2005年刊)はじめ、阿部蒲鉾店の『笹の譜』(1985年刊)や『株式会社スギヨ社史』(1994年刊)には、かまぼこの由来について書かれています。それらを読むと、かまぼこの由来は植物の「蒲の穂」で、もともとは植物の蒲の穂に似せたちくわのような形であったことがわかります。
『かまぼこ造り五十五年のあゆみ』(1975年刊)には「かまぼこ屋のアイスキャンデー」という項があります。今と違って冷蔵技術が発達していなかった昭和10年頃、腐りやすい夏の経営不振に悩む中、大阪の同業者がキャンデー屋を始めたことに影響を受け、当時「新潟県下ではじめての商品」であったキャンデー屋を開業。「二町内にわたって行列ができ交通巡査が整理したほど」売れ、「人海戦術とかまぼこの販売網の大きさが幸い」して夏場の赤字解消につながったそうです。戦後は森永アイスクリームの特約店として県内冷菓業界でも一、二といわれる問屋となり、森永乳業の社長から「あんたは、かまぼこ以外の商いをやらせても板についている」と言われたことも書かれています。
『株式会社スギヨ社史』には「アイスキャンデーにも挑戦」という項があり、昭和26年に購入した製氷装置で作ったキャンデーを、夏の期間商店や市内の店に卸したり、相撲場へ売りに行ったりしていたとあります。このことについては『笹の譜』にも(創業当時について)「蒲鉾専門店といっても、今のような冷蔵設備のない夏場には、どこでも氷水を商ったり、冬場でもおしるこを売ったりして当座をしのぐのが普通だった」と書いてあります。社史を読んでいると、会社や商品の意外な歴史に出会えることが多々あります。ぜひ身近な企業や商品の意外な歴史を探しに社史コーナーを訪れてみてください。講演会の詳細はHPまたはお電話でご確認ください。
(執筆・同館企画情報課 堀田 桃香さん)
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