高津区 コラム
公開日:2023.09.22
不定期連載コーナー
「社史」探訪
第8回 社史で読む「南極物語」
今回は、社史に書かれた南極の物語を探ってみました。その一部をご紹介します。
『共同通信社50年史』(1996年刊)には、第3次観測隊員として派遣された記者が樺太犬タロとジロに会うまでをまとめた「タロ、ジロのもとへ」を掲載。到着時、ヘリの空輸力の制限で観測隊の別の記者が先に上陸し、やりきれない気持ちでいたところ、同情した船側の計らいで船長のヘリに乗せてもらえることに。この措置に対し隊長の厳しい通告を受けたものの、「こっぴどく叱(しか)られるであろう昭和基地へ、ハラを据えて飛び立った」そうです。
タロとジロの話は『いすゞ自動車80年史』(2017年刊)のコラム「南極観測隊とともに60年」にもあります。第1次隊と第2次隊の交代時、悪天候で観測船が接岸できず撤退した際に断腸の思いで残した樺太犬を、1959年1月、第3次隊がヘリコプターから発見。その発見者は同社から派遣された隊員で、映画「南極物語」のモデルとなったエピソードだ」とあります。ちなみに同社の『いすゞ自動車50年史』(1988年刊)には「南極観測隊に3回参加した思い出」という社員の経験談があり、第10次隊の帰路で氷塊にとじこめられた話などを語っています。
NECの『マイクロ波衛星通信事業50年の歴史』(1995年刊)には、世界初の「南極からのテレビ生中継」のプロジェクトの経験談が書いてあります。日本の南極観測20周年を機にNHKが企画したもので、同社へ衛星通信関係の協力依頼がありました。年一回しか往復しない観測船で、氷海からはヘリコプタのキャビン内に入れて運ぶという条件下「一点でも忘れ物があったら、全てダメになるというロジスティックスが重要な厳しいプロジェクト」だったそうです。航海の無事と隊員・乗組員間の親睦を目的とした演芸大会についてなど、経験者ならではのこぼれ話も。アンテナの組み立てと細かな調整、導波管の接続を行い、インテルサットにアクセスできた際は「遂にやったとジーンときた」そうです。
当時の詳細な記録や社員の経験談などは、その会社が主役となる社史ならではの情報です。「社史で読む南極物語」は当館の社史情報紙「社楽」でも扱う予定ですので、お楽しみに。
(執筆・同館企画情報課 堀田 桃香さん)
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