多摩区・麻生区 人物風土記
公開日:2020.10.09
風景絵画展を毎秋開く市民団体「多摩川を描く会」の代表を務める
矢島 茂さん
登戸在住 71歳
日々の情景、写し取る
○…「多摩川愛を絵で表現しよう」と20年前に結成された会の思いを継ぎ、入会6年、昨年から代表を担う。21回目の絵画展を、今年も二ヶ領せせらぎ館で開催中。「初代代表は91歳。一昨年の19回目まで運営していただいたことに感謝しかない」。会員は市民を中心に11人。年に一度は集まり、皆で多摩川を描く。「描いたら見せたいなと思う。発表の場は必要」と、ささやかな展示でもその意義をつなぐ。
○…筆を執り始めたのは多摩高校の美術部。「油絵でゴッホをまねて、色調が激しい筆使いをしていた」。風景画では、横浜・山下公園や江の島に出向いたことも。美大でグラフィックデザインを学ぶと、広告代理店に入り自動車の宣伝に携わった。「車をつくっている人とデザインする人では視点もやりたいことも違う。光や影、情緒的なものは却下されちゃう」。63歳で仕事を離れ、もう一度絵をやってみようと多摩市民館の教室へ。自らの感性で描く面白さに再び触れた。
○…高津区出身。多摩川は身近な存在で、少年時代は二子玉川の兵庫島でよく遊んだ。「単身赴任で名古屋に行ったとき、多摩川に似た川の近くの家にした」と笑う。一男一女に恵まれ、登戸に住んで40年。写真関係の職に就く長男から、絵について言葉をもらうことも。最近は外出が減り、室内に目を向けるようになった。「絵になるものが意外と多い」と、鉛筆で日常をとらえる。
○…もう一つの団体「川崎スケッチ会」でも代表を担う。同会も約20年前の発足で「2000年頃、発起人の人たちが積極的だったのだと思う」とも。そんな各団体の悩みは高齢化。「展示を飾るのも力仕事。絵を始める入り口が狭くなっている感じがする」。この先へ、思いを巡らす。
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