「登戸」という地名には、忘れ得ぬ思い出が二つあります。まず、約50年前、小田急線で初めて見た駅名「登戸」。つぎに、約20年前、柳田國男の『遠野物語』で知られるカッパ淵ちかくで見たバス停名「登戸」。 それから、「登戸」の語源の謎に取り付かれました。
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たまたま、日本最大の『日本国語大辞典』をひもとき、「登る」の語釈(意味)を見直しました。 なんと、「低い所から高い所へ移動する」や 「水上、水中から陸上へ移る」などの語釈が15もあります。
「水上、水中から陸上へ移る」とは、「川が干あがる」現象も意味します。「川が干あがる」現象の一因は、「川の流路変遷」です。「戸」は「所、場所」の意を表わします。
よって、「登戸」の語源は、「多摩川の流路変遷によって陸地になった所」と考えられます。
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1559 (永禄2) 年に成立した『小田原衆所領役帳』にある次の文言に、「多摩川の流路変遷」の証しがあります。
「太田新六郎知行 十二貫五百文 多波川北駒井登戸」
この文言中の「多波川北駒井登戸」は、当時、駒井(狛江)と登戸は地続きで、多波川(多摩川)の北(左岸)に並存した証しであり、多摩川の流路変遷を物語ります。
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旧来の語源説は、「登る」の意を「低い所から高い所へ移動する」に限定したようです。地形的にも、「登る所」などの有力説は釈然としません。
もちろん、「登戸」の「アイヌ語説」や「瑞祥地名説」は論外です。
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