連載112 ふるさと納税 川崎市の現状は みらい川崎市議会議員団 こば りか子
平成27年度にワンストップ特例制度が開始されて以降、ふるさと納税制度を利用する人は増え続けています。ふるさと納税制度の理念は、「ふるさと」への貢献や応援することを望む納税者の想いを実現する制度ですが、市民の方が他の自治体に納税すると川崎市の税収が減少する側面があります。川崎市では平成27年度の減収額(流出額)は2億円でしたが、令和5年度はついに121億円に達し、わずか8年で60倍となってしまいました。
流出額を全国で比較すると、令和5年度実績で横浜市272億円、名古屋市159億円、大阪市148億円となっており、一見すると川崎市より多くみえますが、川崎市以外は地方交付税交付団体であり、交付税で4分の3が補填されるため、影響額は横浜市68億円、名古屋市39億円、大阪市37億円で済む仕組みとなっています。しかし、政令市唯一の交付税不交付団体の川崎市の場合、121億円全額が影響額となってしまいます。
この市民サービス、実現するためにはいくら必要?
現在、本市では小児医療費助成制度の所得制限が撤廃され、対象も中学卒業まで拡大されましたが、小学4年生以上は1回500円の負担金が設定されています。この一部負担金を撤廃するのに必要な費用は、約3億5千万円です。
次に、学校の給食費です。様々な自治体が無償化を実現していることから求める声は多く寄せられていますが、本市で無償化を実現する場合、令和6年度予算では約58億円必要です。ちなみに58億円は、あくまでも保護者が負担している食材費であり、市の一般財源では、施設設備・人件費など学校給食に係る経費として84億5千万円計上しています。
また、避難所にも指定されている学校体育館への空調設備の整備については、ほとんどの学校で実現が進んでいません。「地球沸騰化時代突入」といわれる昨今、避難所機能だけでなく、子どもたちの学びの環境整備としても体育館への空調設備整備は喫緊の課題ですが、空調機器だけでなく断熱工事も必要となるため、過去の実績で、一校あたり約2億3千万円必要です。
さらに身近な話でいえば、ゴミや資源物の収集処理に要する経費は、収集・焼却・資源物のリサイクル等として今年度は約150億円計上しています。
令和6年度のふるさと納税流出額は142億円が見込まれています。今後も、右肩上がりで、ふるさと納税による流出が続けば、実施できていないサービスの実現はもちろんですが、ゴミ収集や介護保険サービス、防犯対策、道路等インフラ整備など現在、当たり前にある市民サービスに影響が出ることも現実味を帯びてきます。
一方、本市ではクラウドファンディングを活用したふるさと納税を受入れており、今年度は市制100周年を記念した多摩川花火大会の花火打上げ費用等も募集する予定です。クラウドファンディングは市民も参加でき、税の控除を受けられるだけでなく、税の使途を自分で選ぶこともできます。ぜひ、ご協力をお願いいたします。
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