資源ごみの一つ、アルミ缶の持ち去りが川崎市内で深刻化している。2018年度の被害想定額は約2790万円で、過去5年間で約1億1千万円もの市の収入源が流出。市は持ち去り防止の対策を講じてきたが、改善のめどは立っていない。条例化を視野に、今年度中に方向性を示す考えだ。
市の試算では、18年度に持ち去られた資源物の損害額は約3440万円で、アルミ缶は8割以上を占める。管轄する市の生活環境事業所は、持ち去り行為の防止策として、パトロールによる当事者の指導や集積所へのポスター掲出で警告を続けてきた。しかし、持ち去り行為は後を絶たず、住民からは騒音やごみの散乱に関する苦情も寄せられているという。
条例による抑制への要望は年々高まっており、6月の市議会では環境局長が条例化を検討していくと言及。年度内に方向性を決める考えを示した。全国では、20の政令指定都市のうち15市が資源ごみの持ち去りに関する条例等を制定している。横浜市は、アルミ缶の持ち去り行為にも20万円以下の罰金を科す。
川崎市で条例化が進まなかった理由の一つに、人権擁護の問題がある。持ち去り行為の多くはホームレスによるもので、アルミ缶の売り払いで得た収入が生活の糧になっているためだ。ホームレスの生活支援に取り組むNPO法人川崎水曜パトロールの会の佐竹拓平理事長は「良い行為ではないかもしれないが、生活していく上でやむを得ない。条例化するのであれば、ホームレスの支援策も充実させるべき」と訴える。40代のホームレスの男性は「生活の保障があれば、缶を集める必要はない」と話す。
ホームレスは減少
一方で、自立支援施設の整備などにより、ホームレスの人数は年々減少。今年の調査では214人で、5年前と比べ半減した。ただ、コロナ禍で生活困窮者の増加を懸念する声もあり、最近はホームレス以外の持ち去り行為が散見されるという。市は今後、ホームレスなどへの影響を含め調査を進め、他都市の状況を参考に条例化を検討していくとしている。
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