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さがみはら中央区 社会

公開日:2021.02.11

22年度開校予定 夜間中学
市民団体「周知に課題」
映画上映などで機運醸成

  • 取材に答えた吉田代表=1月26日

 義務教育未修了の人が学ぶ公立夜間中学について市は、今夏に生徒募集を開始して2022年4月の開校をめざすことを明らかにし、県や関係自治体との調整を進めている。18年に発足し、行政に夜間中学開設を働きかけてきた市民団体「相模原の夜間中学を考える会」は、市民周知と就学希望者の掘り起こしを20年度の取り組みの一つと定め、現在、機運の醸成を図っている。だが、昨年4月と今年1月に企画した夜間中学を描く映画の上映と意見交換の会は、新型コロナの影響でいずれも中止に。同会の吉田惠一代表(68)は「市民周知が足りていない。夏前には上映会を開きたい」と話している。



 夜間中学は、戦後混乱期に義務教育を修了できなかった人たちの学びの場として公立中学校に付設された学級。近年では本国で義務教育を修了していない外国籍の人や、不登校などで十分に学校へ通うことができなかった人たちの学び直しの場としても需要が高まっている。昼間の中学校と同じ公立校で、授業は週5日あり無償。すべての課程を終了すれば中学校卒業となり証書が授与される。16年12月に教育機会確保法が施行され、すべての都道府県に少なくとも1校以上設置されることが国の目標として掲げられた。20年度までで全国に34校、指定都市では12校が設置されている。



 県内には、夜間中学は蒔田中学校(横浜市)と西中原中学校(川崎市)の2校がある。県は17年5月、3校目となる公立夜間中学の新規開設に向けて検討協議会を設置し、同年度に横浜・川崎を除く県域で入学希望者アンケートを実施。回答160人のうち相模原市在住者が最多の54人で、県央地域に住む人の割合も高いという結果が出た。これを受けて相模原市は19年1月に独自のアンケートを行い、回答から一定のニーズを確認したことから、市内での設置を検討し、県と協議を進める考えを表明した。



 検討が進められる中で市は20年11月27日の本会議で、他市町村からも生徒を受け入れる広域的な夜間学級として22年4月の開校をめざし、21年夏頃に生徒募集を行うと表明。県もこれに呼応するように昨年12月1日の議会で、相模原市がめざす夜間中学について教員配置や費用負担などの具体的な調整を進めるとともに、設置場所として当面、南区文京にある県立神奈川総合産業高校の校舎を活用する考えを明らかにした。またその場合、隣接する市立大野南中学の分校と位置付けることも市から示された。



構想に期待も



 「相模原の夜間中学を考える会」は、鹿沼台にあるさがみはら国際交流ラウンジで、外国籍の子どもたちに対して日本語の学習教室などを開催しているボランティアを中心に18年6月に発足。これまでに夜間中学を題材にしたドキュメンタリー映画の上映や識者の講演会などによる市民への周知や、行政への要望活動など、公立夜間中学の新設を後押ししてきた。



 元中学校教員の吉田代表も、教室で外国籍の子どもらに日本語などを教えるボランティアの一人。吉田代表は市が検討を進めている夜間中学の教育内容について「今の時代背景を踏まえた構想になっている」と一定の評価を示す。一方で「課題もある」とし、夜間中学が市民に知られていないことから「生徒募集が始まる前に映画上映会を開催し、周知したい」と話す。加えて、障害のある生徒へのケアや、教員の研修などの必要性にもふれた。



 同会は今後、夜間中学についての市への情報提供や入学希望者の発掘に取り組むとともに、希望者の実態を踏まえ希望に沿う形になるように教育内容や条件などを市に要望していく意向だ。



 市は、同会の活動について「夜間中学を周知いただきありがたい」とし、「市としても今後、県と調整しながら市民や入学希望者への説明会を実施していきたい」と話している。

 

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