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さがみはら中央区 教育

公開日:2025.08.28

減る異年齢遊び、その意義
違い理解し関わる力育む

  • 号令係などの1日の係を決める子どもたち

  • 和泉短期大学松山洋平教授

  • サルティスタ橋本FCの選手らと遊ぶ様子

 道端や公園など、まちなかで子どもたちが年齢関係なく遊んでいる光景をあまり見なくなったと感じる人は多いのではないだろうか。一方、市内には年齢の異なる子ども同士の交流を意図的に作り出す試みもある。現場を取材し、異年齢遊びの意義を考える。

 「Aさんの好きな色は何ですか?」「Bさんの好きな曲は何ですか?」--。これは0〜12歳の子どもの保育施設OHANA(上溝)での一場面。一人が周りの子どもに自由にインタビューをする時間で、質問の難易度を年中から小学5年生までの相手に合わせて変えている様子がうかがえる。

 昨今、きょうだいの数の減少や塾などの習い事、子どもだけで外で遊ばせることへの不安、地域関係の希薄化などのさまざまな要因によって、学校・保育園以外で子どもたちが年齢関係なく遊ぶ機会が減少しているとの指摘がある。

 年齢が異なる子ども同士の遊びには、さまざまな立場の他者を理解し関わる能力を高めるなどの効果があると言われており、相模原市内でも小学校や幼稚園などで異年齢遊びの時間を設けている事例がある。

子育て支援施設OHANA

 OHANAでは夏休みの間、幼児から小学生までの子どもたちが一緒に過ごしていた。取材した8月18日は「朝の会」から始まった。午前8時頃、最年長の児童が「みんな時間見てね」と周囲に呼びかけると、それぞれおもちゃを片づけて部屋を移動。全員が椅子を机にしっかり収めるところまで年長児が注意を払っていた。一般に、異年齢遊びでは年上の子どものリーダーシップが育まれると言われている。

 朝の会では一人の児童が一緒に過ごす子ども一人ひとりにインタビューをした。年中児には「好きな色」を、小学生には「好きな曲」を質問。曲名を問う質問の方が、音楽を楽しむ習慣や好きな曲の名前を意識して記憶することが必要になるため、多少高度な問いだ。聞く内容を相手に合わせて自然と変えている。

 朝の会の後は外遊び。橋本を拠点にする社会人サッカーチーム「サルティスタ橋本FC」の選手らと一緒に遊んだ。保護者や保育の先生とは異なる立場の「お兄さん・お姉さん」と水鉄砲で戦ったり、遊びの中で巧妙に欺かれる経験をしたりしていた。

 チームの有山蒔恩代表はOHANAとの交流を定期化していくと話す。「子どもたちと長期的な関係を築いて第三の頼る先になれたらいい」。こうした時間は子どもたちにとって、地域のさまざまな立場の人と関わる貴重な時間になっている。

立場の差異が刺激に

 OHANAの村田加奈恵代表は、異年齢遊びを通して「例えば一人っ子の子で自己中心的な性格だった子が、目上の子から優しく接してもらう経験を通して幼い子たちにどう関わればいいのかを学び、自分の思いを一旦置いて、幼い子に『どうしたい?』と聞いてあげられるようになった」と話す。

 小学生からOHANAに入り、なかなか自我を出せずにいた子が、0歳からいる子がスタッフに遠慮なく甘えたり思いをぶつけたりする姿を見て、徐々に「自我を出しても良い場所」と気づき、自身の良いところ・悪いところを遠慮なく出せるようになったこともあるという。

和泉短大・松山教授

 子どもの異年齢遊びの現状や意義について、保育者を育てる教育機関・和泉短期大学(青葉)で保育学や幼児教育学を研究している松山洋平教授に話を聞いた。

 「少子化が進行しているので、同学年であっても子ども同士が遊ぶこと自体難しくなっている。少子化進行前、ベビーブームのときの構造であれば、まちで放課後に遊ぶことが普通にあった。小さい子は鬼ごっこで鬼にタッチされても鬼にならないなど、異年齢で遊ぶコツを自分たちで生み出していた」

 異年齢で遊ぶ意義については「違うモデルを見ること」と話す。「『できること、考えていること、使う言葉がちょっと違う』は異年齢のほうが起こりやすい。憧れを抱くこともあるし、自分とは違う存在として他者を見ていく機会になることが多い」

「広がろう、つながろう」

 今、地域社会で危惧されているのは子どもたちの異年齢遊びの機会の減少だけではないという。松山教授は「親も孤立している。今までは地域にドラえもんやサザエさんの社会があったが、今はそれぞれが閉じていく方向にある。家庭、学校、保育園などのコミュニティを他に開き、もう一度広がり、つながることが豊かさになる。こういうまちづくりの一つが子育て支援施設OHANA」と話す。

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