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「自己肯定感」を育む幼児教育 桜美林大学 久保義郎(よしお)教授

文化

公開:2018年2月8日

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久保義郎教授:桜美林大学健康福祉学群保育専修で「発達心理学」などの科目を担当。専門は「リハビリテーション心理学」。「日本認知・行動療法学会」「日本健康心理学会」などに所属し、臨床心理士の資格を有する。
久保義郎教授:桜美林大学健康福祉学群保育専修で「発達心理学」などの科目を担当。専門は「リハビリテーション心理学」。「日本認知・行動療法学会」「日本健康心理学会」などに所属し、臨床心理士の資格を有する。

 幼児期の教育や子育てはその後の人間形成において重要とされており、専門家らにより多くの研究がなされている。そこで、今回は桜美林大学(町田市)で発達心理の講義などを担当する久保義郎教授(51)に、学術的な観点から子どもへの教育、育て方で注意すべき点などを聞いた。

 久保教授は「リハビリテーション心理学」を専門とし、子どもの発達に関する分野にも明るい。そんな久保教授が幼児教育において重要なポイントとして挙げるのが「自己肯定感」。自己肯定感とは、特定の条件や前提を必要とせずに自分自身を価値のある存在と認識するもので、「自尊感情」と呼ばれることもある。

 久保教授は「自己肯定感は幼児期を中心に他者との関わりの中で形成されます。自己肯定感が強い人は、困難な事や新しい事にも前向きになれ、学習や仕事にも自律的に取組むことができる傾向にあります」と話す。逆に言えば、自己肯定感が弱いと消極的になり、学習や仕事への自信や意欲も低下しやすいという。

 久保教授によると、日本は諸外国と比べ突出して自己肯定感が低い傾向にある。2013年に13歳から29歳までの若者を対象に内閣府が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では「自分自身に満足している」と回答した割合がアメリカやドイツ、フランスなどが80%を超えているのに対して、日本はわずか45%だった。こうした傾向を久保教授は「詳しい要因はまだ確定されていませんが、謙虚を美徳とする日本の文化的な背景を含めたいくつかの要因があるようです」と分析する。

基礎をなす「愛着」

 次に、自己肯定感を高めるためにはどのような教育、子育てを行えば良いのか。久保教授はその下地として「愛着」を育むことの重要性を指摘する。愛着とは、人が特定の対象に対して持つ親密な感情を指す。久保教授によると人は生まれて間もなくから、他者とコミュニケーションを始め、生後3か月を過ぎると母親や父親を認識するようになる。そうした中で幼児は、泣き声を上げるなどの意思表示に対してまわりの親などがそれにしっかり反応すると、親との愛着関係が築かれ、幼児も自らの存在が受け容れられていることを感じるという。

 久保教授によると、幼児期のこうした経験がその後の他者との関わり方の基礎となり「この時期に親から向き合ってもらう経験が自分の存在を肯定し、他者と自信を持って関わる力となります」とした上で、「この場合の『親』と言うのは母親の場合が多いですが、もちろん父親も他の周囲の大人も含まれます。周囲の人々に幼児が『受け容れられている』と感じる対応が重要です」と話す。

環境整え「過程」を褒める

 幼児期の後期(3歳から6歳)に入ると、子どもへの教育を目的に幼稚園に通わせ、習い事を始めさせる家庭も多くなる中、久保教授は、幼児期には様々な事を経験できる環境を用意することの大切さを説く。「子どもが興味を持ったことへ自発的に取組める環境を整え、その中で子どもが面白さや達成感などを感じることがその後の成長においても重要だと思います」。親や周囲の大人に対しては「大人は子どもの『〜ができた、できない』という『結果』に反応しがちですが、無条件に愛情を伝えることが重要です。そして結果ではなく、『過程』の頑張りを見守り、褒めることも大事です」と子育てのポイントを示す。子どもは「結果」だけに反応されると、「結果を出さないと受け容れられない」と思って頑張り過ぎたり、逆に自信をなくしたりする恐れがあるためで、「結果にとらわれずに子どもと向き合うことで子ども自身の自己肯定感が高まり、安心して新しいことに挑戦したり、失敗しても前向きでいることができます」と説明する。

 久保教授は最後に「子どもは自分が大切に思われているか、気にしているものです。余裕がないと難しいですが『大切だよ』と伝えたり、子どもなりの頑張りを褒める機会を見つけてみてください」と呼びかけた。

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