各界で功績のある人を称える2020年春の叙勲が発表され、千人町在住の薬剤師、茂木徹さん(71)が旭日双光章を受章した(薬事功労)。
同じ質問6年
功績の1つが薬剤師会を通じて薬剤師の損害保険を整えたこと。かつて調剤事故を起こした薬剤師が自殺に追い込まれたこともあったことから「事故自体があってはならないものだが、万一のときに薬剤師を守ることも薬剤師会の仕事」と改善に尽力した。しかし、市や都の薬剤師会で提案しても、なかなか前に進まない。「たらいまわしにされ『それは日本全体の話だ』と言われてしまった。だったら日本薬剤師会に意見しよう」と選挙に出て、日本薬剤師会の代議員に。その後も思うような答弁が得られなかったが6年間、同じ質問を繰り返した。「質問から逃げられない、という雰囲気を作り、決断を促した」。信念が実り、小さな薬局でも弁護士の指導が受けられる仕組みが整った。また、取り違えやすい薬がある場合は、メーカーに要望して1種類に統一するなど、ミス予防にも貢献した。
薬の写真付き説明も
今では当たり前になった写真付きの薬の説明も、自身の薬局が先駆けて行ったという。「告知していない患者に、抗がん剤が入っていることが知れてしまう」など医師から反対意見もあったそうだが、患者にわからないように告知の有無を処方箋に記入してもらうなどの工夫で乗り切った。「患者が薬のミスに気付くきっかけにもなる。普及しなければ」。そこでも信じる道を貫いた。
叙勲を受けるにあたって「自分がもらっていいいのだろうか。その資格があるのか」と自問したという。「人のために生きる人を作ることが科せられた使命」と考えて受けた。
弱者救済こそ
69歳まで店頭に立ち、近所の人たちと接点を深めるために老人会で話す機会を設けてもらった。「病院に行く前に相談してもらえるような薬局を作りたい。弱者の救済こそ人の道。そう考える薬剤師がこれからの日本には必要」
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