工学院大学附属高等学校(中野町)の生徒らを中心とした防災啓発グループ「ちーむべりぃぐっと!」がこの春、卒業を機に解散する。自分たちより年下の子どもたちに防災の大切さを知ってもらおうと動画配信や学校訪問をするなどし、5年間活動した。7人のリーダーで同校3年の飛川優さんにその取り組みを振り返ってもらった。
経験伝えたい
グループの結成は2017年10月、附属中学の2年生だった飛川さんらが修学旅行で東日本大震災の被災地、宮城県を訪れたことがきっかけ。当初は被災地の応援のつもりで行ったが、現地でそこが「自分たちの街」であると想像すると一気に防災への意識が高まったそう。
翌月、自主的に被災地を再訪し、実際津波の被害にあった人らから聞き取りをした。その経験と対策を多くの人に伝えていこうと考え同校6人と他校の1人が集まりグループを始めることにした。
子ども向け動画
「中学生の自分たちに何ができるか?年上の大人には難しいが、年下の小学生に向けてならできるかも」。伝える手段は、学校の授業でも覚えた動画の配信(ユーチューブ)。出演は自分たちで、「子ども向け」ということでコミカルなキャラクターにコスプレをし、指導者役と助手役のやりとりで進行する設定を作った。19年1月、彼らが中学3年生のとき、「ちーむべりぃぐっと!チャンネル」を開設。実質的な活動をスタートさせた。
制作、撮影には学校の力を借り、動画は毎週日曜日に更新することを目指した。その内容は防災工作など子どもにもわかりやすいと思われるもの。再生回数は二桁のものもあるが、中には2万5000回を超えた「力作」もある。
反応にやりがい
そのような防災動画を配信する取り組みと並行し、実際に小学校に出向いて防災教室を開くこともした。メンバーはユーチューブ内の設定であるキャラの格好で、体育館の壇上から防災についてのクイズを出すなどした。コロナ禍以降は制限がされ、なかなか思うような形でできなかったが、「お兄さんたちの愉快なやりとり」に対し児童、学校からの評判は軒並み上々だったそう。「ユーチューブ配信と違い、見て聞いてくれた人の反応がわかるのが、やりがいでした」と学校訪問について飛川さんは話す。「動画を作ることは楽しいですが、『自己満足になっていないか?』『世間のためになっているのか?』など自問自答しながらやっていました。それに引き換え、対面では『伝わっている』感じがわかり充実した活動でした」
5年間で最も印象的だったのは被災地で生の声を聞いたこと、その遺構を目の当たりにしたこと、だ。飛川さんは合計4回訪問し宮城県気仙沼市では、まだ瓦礫が残っている高校を案内してもらった。「それまでも被災した場所は見ましたがきれいに片付けられていました。それと違ってその学校は教科書もあのときのままで。(震災の怖さを)実感できた気がしました」。その衝撃はその後の活動の動機付けになったそう。
また活躍の場が
7人はこの春、それぞれの進路をいく。「バラバラになるけど、逆に持ち寄れるものもあると思う」と飛川さんは再結成について前向きのよう。5年間の活動で120本以上の動画をアップ。合計8回、小学校で防災教室を開いた。そもそも子どもたちに伝えようとしたのは「これからは東日本大震災を知らない子も増えてくる」から。そして子どもに伝われば「その親にも届くはず」と思ったからだ。活動を見守った保護者の1人は「まさに探求の極み。様々なツールを駆使し考え実践し次につなげた。学びあいと役割分担でチームとしての機能も発揮し、見ている方もワクワクした」と話す。また「もともと身に付けさせるのが難しい分野である『防災』を今、国も教育にとりいれようとしている。どこかでまた彼らの活躍の場ができてくるのでは」と期待している。
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