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八王子 文化

公開日:2023.09.29

天然理心流日野道場
新選組の剣術 後世に
隊士の子孫 井上雅雄さん

  • 天然理心流が修練に使用する表木刀(おもてぼくとう)を構える井上館長。重さは1.5〜2kgある =9月19日・日野道場

  • 貴重な資料が並ぶ井上源三郎資料館

 近藤勇や土方歳三、沖田総司ら多くの新選組隊士が学んだ剣術「天然理心流」。その技と心を今に伝える一人が、新選組六番隊組長を務めた井上源三郎と兄・松五郎兄弟から5代目の子孫にあたる井上雅雄さん(68)だ。雅雄さんは井上兄弟の生家でもある自宅の土蔵を改修して、2004年に井上源三郎資料館を開設。19年に改装した際に、2階に天然理心流の道場を開いた。

 井上兄弟は、どちらも天然理心流・免許皆伝の達人。雅雄さんも小学生の頃から剣道を習い、50代の頃に近藤勇の子孫で天然理心流宗家の宮川清蔵さんの下で先祖が身につけた剣術を学んだ。

 現在は高校生から60代まで15人の門人を指導し、ひの新選組まつりや八坂神社の例祭などで演武を披露している。

陰の功労者

 雅雄さんによれば戦国時代、井上家は駿河・遠江(現在の静岡県一帯)を治める今川義元に仕えていた。今川家衰退後は武田家、武田家滅亡後は徳川家康に召し抱えられ、武蔵国日野宿北原(現在の日野市日野本町)へ移った。江戸時代には、治安維持や日光の火の番などに従事した「八王子千人同心」の組頭を代々務め、松五郎も第7代目の組頭だったという。

 徳川恩顧の気風があった日野では「幕府の有事には剣を手に取って戦う」という思いから農民でも剣術の稽古をする者が多く、井上兄弟も幼い頃から八王子千人同心の千人頭・河野仲次郎通聿(みちのぶ)の組頭・日野嘉蔵義貴(ひのかぞうよしたか)の寺子屋で文武に励んだ。天然理心流2代目の近藤三助が八王子千人同心だったことから松五郎も戸吹村(現在の八王子市戸吹町)にあった近藤の道場に通い、そこで嶋崎周助(後の3代目・近藤周助)と出会い指導を受けたという。後に新選組の後援者になった佐藤彦五郎が日野に道場を開いた際、彦五郎に周助を紹介したのが松五郎とされる。近藤勇や沖田らが日野の道場に出稽古に来ると、松五郎が指導した。

 松五郎は時の将軍・徳川家茂の上洛の際に警護で随行し、京都では新選組の相談役を務めた。雅雄さんは「新選組結成時から後の隊士募集まで、八王子千人同心との関係をつないでいたのが井上兄弟だった」と先祖の陰の功績を明かした。

 日野市制施行60周年の今年は、新選組結成から160年にあたる年でもある。雅雄さんは「井上兄弟の天然理心流を後世に伝えるために、これからも修練に励んでいきたい」と思いを語った。

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