犯罪なき社会実現のために

　○…地域を「防犯」の観点から見つめ、警察に協力したとして警察庁長官表彰を受賞した。国民の顕著な功労に対して警察庁長官から与えられる最高位の表彰とされている。日本防犯設備協会が認める防犯の専門知識を持つプロフェッショナル「総合防犯設備士」の資格をもち、依頼を受け防犯対策の助言や講演を請け負う仕事柄、「こういう人間が地域にいることを知ってもらえたら」と謙虚に受け止める。

　○…福岡県出身。都内の大学を卒業後、広告代理店で働いていたが、「これからはセキュリティの時代だ」と息巻く先輩に背中を押され、30歳頃に防犯設備会社へ転職した。泥棒や不審者を侵入させない家や施設、街づくりを目指すという大義は以前の仕事とまったく異なり戸惑ったものの、「家や街ごとに最適な防犯方法が異なる。毎回、最善の方法を探るのがこの仕事の醍醐味」とやりがいを感じ、25年前には独立も果たした。

　○…完璧な防犯を目指すと、「最新の防犯カメラやシステムを導入したくなる」一方で、「高齢化が進む地域ではお勧めしない。機械は扱うのが難しい」と注意を促す。ハード面を足すのではなく、「街にまぎれている犯罪企図者を含め、積極的にあいさつするなど心理的に圧力をかけることで防げる犯罪がある」と強調する。

　○…八王子には、結婚を機に35年間暮らす。警視庁の警察官相手に実務研修の講師を担当することもあれば、施設の建設段階から防犯面の助言をすることもあるが、「犯罪が起きないことが当たり前」とされ、なかなか評価されにくい世界でもある。「その下にはさまざまな人の努力があるんですけどね」。安全が当たり前な社会を維持するため、今日も知識と技術を磨き続ける。