林業の灯、次世代へ

　○…今秋、東京都で初開催された聴覚障がい者のための東京２０２５デフリンピック。選手に渡されるメダルを収納するケースの製作を請け負った。世界基準の厳しい要望をクリアした、珍しい多摩産材でつくった木箱。正式発注を受けてから約３カ月半という短い期間で１６７７個を納めることに成功。デザインが決定するのに時間がかかり、「納期に間に合ったときはすごく安心した」と心境を語った。

　○…高校卒業後、金融機関に10年以上勤めた。子育てとの両立などを求め、森林事業関係の仕事に転職したのは29歳のとき。木材加工工場で製品作りや販売に20年間従事する中で、現在の豊かな森林環境を持続させるにはどうすればいいのか、意識するようになる。

　○…前職の経験を活かし独立したのは２０１７年。木材加工に関する依頼を適切な関係機関につなげるコンシェルジュ業を始めた。八王子の地を拠点に選んだのは、一緒に起業した仲間の住まいと「だいたい中間で自然が豊かだったから」。今では自然あふれる森林地区と、人が集まる市街地地区が共存するまちの特色を気に入っている。依頼を自身の法人でも請け負えるよう、念願の就労継続支援事業所も設立。利用者により高い工賃をわたすことを目指し、現時点においては「実現できている」と話す。

　○…何度も試行錯誤して完成させたメダル入れ。多摩産材で東京らしさを、彫刻された「折り鶴」で日本らしさを演出。完成品を見た友人に「メダルよりケースの方を飾りたい」と言われたことがうれしかった。次に目指すのは、子どもたちの心の成長を促す「木育」の展開だ。イベントでのワークショップ開催を皮切りに、いずれは森のテーマパークをつくりたいと構想する。